ウソの壁
失敗を認めることは、そんなに難しいミッションではない。
頭を下げることも、ふつうの大人ならやってできないことではない。
でも、自分のウソを認めることは、これは、とんでもなくむずかしい。
というよりも、非を認めることや謝罪をすることは、やり方とタイミング次第では、男を上げることにつながる。とすれば、それらは、難しいとかやさしいということとは別に、社会人として生きていくために身につけておくべき基本的なプロトコルでもある。
一方、自分がウソつきであることを認めて、なお人としての威厳を保つことは、不可能に近い。なんとなれば、つき通せなかったウソは、バレたものであれ、白状したものであれ、どっちみち最悪だからだ。
何が言いたいのかと言うと、つまり、このたびの「@堀江メール騒動」において民主党執行部が展開した強気一点張りの対応の裏には、ウソが介在している、ということだ。最初の段階でウソをついてしまったために、以後、撤退という選択肢を無くしてしまった、と、そういうふうに考えないと、あの一連のバカな態度について、合理的な説明がつかないわけですよ。
たとえば、永田議員の質問が単純な勇み足に過ぎなかったのなら、民主党とて、比較的早い段階で謝っていたと思う。
「ごめん、言い過ぎた」
で済むわけだし。
その勇み足の質問に、党執行部がうかつにも乗っかったのだとしても、そのうかつさや軽薄さのうしろに嘘が含まれていなかったのなら
「ごめん、勘違いだった」
と、早い段階で謝罪して、撤退することが可能だった。
でも、彼らは謝ることができなかった。
非を認めることもできなかった。
論点をそらしたり、逆ギレしてみせたり、虚勢を張ったり、胆力のあるところを見せようとしたり、そういう努力は繰り返していたが、自らの誤りを認めるという、最も基本的な一番最初の仕事に、まったく手をつけることができないままここまで来てしまった。
なぜか?
嘘をついていたからだ。
おそらく、堀江メールの一番最初のところに嘘があった。で、その嘘を見破られないために、さらに嘘を塗り固めてしまった。
と、これはもう撤退できない。
最初の嘘(つまり、メールそのものが捏造であることを永田議員自身が知っていたということ)を隠蔽するためには、「情報源の身の安全を守る」だとかいった子供っぽいプロットが必要になるわけだし、その話の不自然さを糊塗するには、「われわれはさらに決定的な証拠を握っている」ぐらいのフカシをいれねばならなくなる。
と、ここまでやったら、もう撤退は不可能。
「巨悪が」
式の、少年探偵団ストーリーを振り回し、あるいは
「報告は伺っております」
と、木で鼻をくくったような答弁を繰り返したり
「闇の勢力が……」
みたいな陰謀論を持ってくるほかに、どうしようもなかったわけだ。
28日の記者会見において、民主党は、どのあたりに防衛ラインを引くのだろうか。
- 永田はだまされていた。
- 執行部は永田を信用した。
- が、不幸にして、メールの信用性を証明することができなかった。
- とはいえ、武部次男の疑惑が消えたわけではない。
と、こんな都合の良いところで済むのだと思っているのだとしたら、彼らも考えが甘い。
この期に及んでそんな「二人っきりで一晩を過ごしたのは事実ですが、トランプをやっていただけです」みたいな話をしたところで、誰も納得しない。傷口を広げるだけだ。
といって、
- すんません、ウソついてました。
- 永田がメールを捏造してました。
- 党首脳も、途中からそのウソに乗っかってしまいました。
- うん。カッコつけちゃっただけで、悪気はなかったんだ。ごめんよ。
と、ここまで認めてしまったら、永田辞職、野田更迭、前原辞任は避けられない。
退くも地獄、進むも地獄。
どうするんでしょうね。
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