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2014/04/30

脆弱性

 IEの脆弱性がまたぞろ話題になっているようなので、古い原稿を再アップしておきます。

 今は亡き『Asahiパソコン』誌に連載していました《隘亭長屋》という落語仕立てのIT用語解説コラム(←無茶な企画でした)のために書いた記事です。掲載はたぶん2003年の10月頃だと思われます。



「お頼み申します。普請奉行様のお役所はこちらでございましょうか。当方は、隘亭長屋の大家、長次郎と申す町人です。この度は、長屋のとっつきにございます橋の件でお願いにあがりました次第で……」
「橋? 橋が落ちたと申すか?」
「いえ、あの、まだ落ちたわけではございませんのですが、老朽化がひどくて……」
「ええい黙れじじい。橋の老朽化を監査評定するは普請奉行の専権事項である。資格も見識も持たぬ一介の町人風情が、要らぬ差し出口を垂らしおると身のためにならぬぞ」
「……しかしながら、現に橋はグラグラなわけでして、もし万が一、落ちたらと思うと……」
「落ちる? その方、今落ちると申したか? して、そちは、誰の許可を得て、橋から落ちようと画策しておるのじゃ?」
「滅相もございません。誰が好んで橋から飛び降りたりなどするものですか。私が申し上げているのは、橋が落ちたら、当然橋の上を歩いている人間も一緒に川に落ちるはずだ、という論理の必然でありまして……」
「何? 論理とな? 必然とな? 汝、武家に向かって理を説くつもりか? 奉行をつかまえて論理学の初歩を教えて聞かせる所存か? 一体どこまで思い上がれば、分際を超えてかくのごとき増長慢の町人が、橋の爆破を……」
「ば、爆破なんて、とんでもございません」
「しかし、橋もろとも川に落ちると言い放っておったのはほかならぬその方じゃぞ」
「いえ、私が申しましたのは、あくまでも仮定の話でございまして、もし、万が一、橋が落ちたら、というその一点が心配で……」
「ほほう。というと、そちは、仮定の話で奉行を誹謗中傷しようと、そういうわけだな? もし万が一太陽が二つに割れて、隕石が石油タンクに落ちたら普請奉行の責任である、と、そのように申して拙者の失脚を……」
「どうしてそう極端な話を……つまり、平たく言えば、橋が弱っているからなんとかしてくれ、と、そう陳情に上がってるわけですアタシは」
「ふむ。橋が弱っている……というと、つまり、アレだな? 脆弱性じゃな」
「は?」
「脆弱性じゃよ。知らんのか?」
「脆弱性と申しますと、もしかして、ブラウザのセキュリティーホールがナニで、ウィルスに対する脆弱性がアレだから、パッチプログラムをダウンロードして対策を……という例の、高飛車な欠陥修正命令のことですか?」
「なんだ、わかっておるのじゃないか。さよう。製品になんらかの不具合いがある場合、メーカー側に責任を取る意思がある時には、「欠陥」「バグ」「故障」という言葉が使われる。でも、ユーザー側に責任をおっかぶせる場合は、脆弱性という言葉を使うわけだ。ははは」
「……つまり、橋は自分で直せ、と?」
「うむ。奉行所のホームページから補修手順の書類をダウンロードしてもよいぞ」
「費用は?」
「……パッチプログラムは無料配布じゃ。アップデートのページから随時ダウンロード……」
「いえ、肝心の補修費用の方です」
「ブツ……当奉行所はただいま、アクセス過多により……サーバーの脆弱性が……」
「……切れた。よーし、こうなったら、橋から落ちて損害賠償請求を……」
「ダメですご隠居。橋の手前に使用許諾のダイヤログがあって、いかなる損害云々の質問にイエスをクリックしないと渡れません」
「うーむ。なんと頑強な脆弱性……」



以上です。無茶な記事ですが、もちろん冗談ですので、抗議を寄せてきたりしないでください。 J-CASTも本気にしたふりをして記事化しないように。

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