落語会の手帖
談笑師匠が律儀にもコメント欄に顔を出してくださったので、私も、感想を述べておくことにします。律儀者のコダクローム。
午後7時より、西新宿にて落語観賞。
先日、平川さんからチケットをいただき、「今回はぜひ」と、強力に薦められておりましたので。
ええ、プレッシャーを感じました。
これまで、3回ほどチケットをいただきながら、いずれも落語会の当日までに期日を失念していて、貴重な切符を結局無駄にしてましたから。なんという罰当たり。不義理。KY。
で、午後五時半に、自転車で赤羽を出発。
徐々に暗くなる山手通りをひたすら西に向かって走る。
途中、突然の空腹。
東中野近辺のコンビニにて牛乳とサンドウィッチを購入。
で、駐車場の車輪止めに座っていま買ったばかりのサンドウィッチをかじる。暗がりで。黙って。たった一人で。BGMも無しに。
異様な姿ですね。
オレが駐車場の地主だったら通報してますね。
開演15分前に西新宿のホールに到着。
と、おお、入り口の前で、平川さんが談笑師匠と談笑している。
軽く会釈をすると、師匠を紹介してくださる。
年甲斐もなく緊張して「どうもどうもどうもどうも」と意味のわからない挨拶をして、そそくさと会場に逃げ込む。Why am I so shy? というフレーズがルー先生の歌にありました。
演目は、立川談笑「天災」
聞いたことのある噺だった。
立川談志のMP3ファイルを持っているので。入手経路は内緒だが。
基本的な話の流れは談志師匠がやっていたのと同じ。でもディテールは違う。
八五郎の性格描写は同じ。
でも、ディテールはやっぱり違う。その違いが興味深い。同じハナシでも、語り手の声質や演出の如何で、印象がまるで違って聞こえる。面白い。
八五郎が道学者の話を崩して語る時の崩しっぷりも独特。ほとんど原型をとどめないぐちゃぐちゃな崩しようが見事。
とても面白かった。
この後、米粒写経という早稲田の落研出身だという漫才の人たちが、30分ほどネタをやる。
これも面白かった。
しゃべりのテンポが良くて、私は好きだ。
関西の匂いがしないのも良い。
でも、内容がハイブローなので、テレビには乗りにくいかもしれない。
まあ、無理矢理に乗ることもないわけだが。
再度談笑師匠が登場。
途中で、
「あれ、これって、もしかして芝浜か?」
と、気付く。
3ヶ月(あるいは半年ぐらいたっているかもしれない)ほど前、NHKのBSで立川談志特集をやった時に、このハナシがクローズアップされていたのを覚えていたから。
でも、設定はまるで違う。
談志バージョンでは、江戸時代の大工だった男が、談笑版では、現代のトラック運転手になっている。
無理筋といえば無理筋。
でも、強引にハナシにしてしまう。見事。
で、時代とキャラをいじった以上、当然、設定はなにからなにまで総取っ替えになる。
酒浸り→シャブ中
小判→ジュラルミンケース入りの現金
で、主人公は暴走族の特攻隊長あがりということになっていて、女房も元をたどればレディースの総長。
ちからづくのちからわざ。見事。
さらに、これは談志バージョンにはなかったサブストーリーだと思うのだが、女房が援交で稼いだカネでシャブを買うみたいな展開もあったりする。
シャブを打つ場面の描写(血管を叩いて浮き出させるあたりの演技があまりにもリアル)や、途中のアドリブなど、到底テレビにはかけられないだろう。
その他、宗教や企業や民族ネタのアドリブもほぼ全面的にカットでありましょう。
とにかく面白かった。
落語は基本的には大好き(なにしろ生まれて初めて買ったレコードが「笑点音頭」で、憧れのスターが王でも長嶋でもなく、立川談志である、そういう小学生だったわけですから)なのだが、寄席に行こうというふうに思ったことはこれまで一度もなかった。
どうしてなのだろう。
大学を出てからこっちの30年間、私は、映画館にも寄席にもほとんどまったく足を運ばなかった。演劇もほぼ知らない。
これは、考えようによっては、お手柄だ。
どうせ、この先、本はあんまり読めなくなるからだ。老眼も進むし、根気も無くなってくるわけだからして。
とすれば、未見の名画と、未知の落語をヤマほど持っていることは、こりゃひと財産ですぜ。パチパチパチ。
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