入院の顛末
午後、風呂場から異音。いつもの通り、イギー氏が住処の棚からバスタブの蓋にダイビング(最近痩せたイギー氏は、棚の隙間をすり抜けることができるようになった。で、降下用のハシゴを架けていない時も、随時降臨する)した音だろうと思って見に行く。
と、バスタブの蓋一面におびただしい血。
どうやら爪が抜けた模様。
体色も黒変(全体に黒っぽくなる:強度のストレスがかかると体表の色が変わる)している。
すぐにシャワーで洗ってとりあえず水を与える。
五分後:状態は改善せず。
というよりも、ほとんど動かなくなっている。出血多量によるショック症状だろうか。
見ているうちに、まぶたを開けたままの状態で眼球が下方向に行ってしまう。眼球自体がちょっと引っ込んだ感じにも見える。
非常事態。
背中を撫でてみるが、動かなくなっている。
呼吸もしていない。完全にアゴを地面に着けた状態。
5分ほど観察して、死亡を確信。うわあ。
以後、十五分ほどのうちに、以下の作業を同時進行でこなす。
- まず、オバタカズユキ氏に連絡。ずっと以前、どこかの雑誌で読んだオバタ氏の随筆原稿(あるいは書籍かも)の中に、「子供の頃イグアナを飼っていたことがあって、死後剥製にした」という話があったことを思い出したから。その原稿を読んだ時以来「もしうちのイギー氏に何かあった時には、剥製関連のお話を教えてもらわねば」と、なんとなく思っていたのだった。
- が、オバタ氏は不在。事務所のスタッフに事情を話してとりあえずこの件はペンディング。
- ホームセンターに急行。遺体安置&冷却保存用のケースを物色。ちょうど好適なサイズの押し入れ用衣装ケースを発見したので即購入。
- 帰宅。さて、遺体をケースに移送せねば……と思ってイギー氏を見ると、おお、さきほどと微妙に居場所がズレている。ん? 動いたのか? ってことはもしかして生きているのか?
- もういちど背中を押してみるとかすかに反応する。さらにアゴのあたりを持ち上げてみると、なんと目を開くではないか。
- ということで、葬儀&剥製スキームは放棄。急遽病院探しを始める。
- 以前、本郷界隈を自転車で走っている時に偶然発見した爬虫類専門病院(本郷三丁目)を検索して、電話してみる。こちらの状況を伝えると
「あいにく本日は予約がいっぱいで診ることができない。近くにイグアナを診られる医者がいるので、そちらに連絡してみてはどうか」
ということで、駒込にあるエキゾチックアニマル専門の動物病院を紹介される。 - 電話してみると、「院長は不在だが、とりあえず診ることはできる」というので、早速駆けつけることに。
- クルマで運ぶ間、多少元気を取り戻しているようにも見えたが、待合室で待つ間にまた衰弱。
- 診療時には、ほとんど無反応。かすかに呼吸してはいるが、傷口を焼く(小型のニクロム線みたいな)間も、痛がりさえしない。
- そのまま入院して、院長先生(大学に出かけているとのこと)の診断を待つことに。
で、帰宅。
爪が抜けたことは、以前にも2回ほどあった。
イギー氏は何かの拍子に指一本で全体重を支えてしまう(つまり、ぶら下がるわけですね)場合があるから。で、そういう時には、爪が体重を支えきれず、根本から脱落したり、途中で折れることになる。
これまでの例では、爪が脱落するとけっこうな出血はあるものの、ドルマイシン軟膏を塗っておけばじきに傷口はふさがり、3ヶ月ほどで新しい爪が生えてくるはずだった。
ところが、今回は、出血がやけに多い。
血がかたまりにくくなっていたのか、あるいは傷口が以前のケースと比べて大きかったのか……理由はわからない。
いずれにしても、衰弱していたことは確かだ。
出血の量もさることながら、出血のショックに対する耐性自体が落ちていたのかもしれない。
なにしろ、この春で十三歳だし。
イグアナとしては長老格だ。
この四月に、咬傷事件を起こして以来、食欲がめっきり減っていた。
事件から半月ぐらいは、露骨に気持ちが荒れていて、それがおさまっても、全体的に活動量が衰えていた。で、体重も目に見えて減った。
心配していたのだが。
とにかく、この2~3日がヤマだと思う。
なんとか持ち直してほしい。
最後に、業務連絡をば。
ミシマ社の皆さん。コラム道の原稿、お待たせしております。ここに書けないこと(←「いまのところは」ということですが)も含めて、色々と多事多端でありましたもので。
今週の金曜日までには必ず第一弾をお送りします。いますこしだけお待ちください。
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コメント
生きてて良かったですね!
最初はイギーの死にショックを受けた小田島さんが
入院したのかと(;´Д⊂
投稿: けろ | 2008/09/28 23:45
>5分ほど観察して、死亡を確信。
>(まず)死後剥製
“段取り”の手際良さがちょっとショックだったりして...イグアナという爬虫類ともなると(家族同様ということもあるウエットな)ペット感覚ではなく、プラモ並みの認識なのでしょうか。
そういえば、最近の著作も『標本箱』でしたね。
プギャーでし(≧m≦)
投稿: あおきひとし | 2008/09/29 17:45
とりあえずイギー氏のご快復をお祈りしております・・
投稿: a.c. | 2008/09/30 21:36
どうぞお大事に!他人事と思えません。
意外な場所でお名前を拝見したんですが。
投稿: SL-A300遣い | 2008/10/01 04:30