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2008/02/15

閉店

 昼過ぎ、昼飯ついでに川口まで出かける。探している本があったので。
 赤羽には、「城北最大」(←「池袋は城北じゃなくて都心だよね」式の超ローカルな地元意識における「城北最大」。すなわち「北板橋両区における井の中のトノサマ」ぐらいな半端夜郎自大)を謳う中規模書店がある。
 でも中規模書店というのは、いかにも中途半端な存在で、雑誌やベストセラーを買うぶんには良いのだが、ちょいとマニアックな本はまず見つからない。たとえばオダジマの本とかは新刊の時でも2冊ぐらいしか入荷しない。で、オレが買うと売り切れ。それっきり。そういう本屋です。
 ってことはつまりコンビニとたいして変わらないわけだ。わたくしどもインテリにとっては。
 で、ちょっとした本を探していたり、特定のジャンルの新刊でめぼしいものを漁る時には、川口まで出かけるのが私の中のコースになっていた。

 ところが、本日約3ヶ月ぶりに訪れたその「書泉ブックドーム川口店」は、既に閉店している。
 駅方面から歩いて来て、一階の一角が携帯電話のショップ(Dokomo)になっているのを発見した時、既にいやな予感がした。近づいてみると、ドコモショップの向こう側のメインの入り口にはシャッターが降りている。
「ん? 休みか?」
 とは思わなかった。
 というのも、店頭のたたずまいが、明らかに撤退店舗のそれだったから。具体的にどこを見て廃業と判断したのかと問われると返事に窮するのだが、実際に見てみれば一目瞭然。閉店に追い込まれた店ならではの寂寥感みたいなものが、周囲を圧していた。

 入り口前の張り紙(←ワープロ打ち。これも淋しい。だって、仮にもビル一つまるごとを占有する大型総合書店だったわけですよ。その、地域随一の大規模書店の閉店を知らせる告知が、A4ペラのワープロ文書であって良いものなのか?)によれば、閉店は1月27日とのこと。

 以前から、行くたびにフロアが縮小されていたり、最上階のレストランが撤退したまま後の店が入っていなかったりで、なんとなくサビれた感じはしていたのだが、それはそれとして、閑散とした店内でゆっくり本を眺められるこの店は、私にとって大切なスペースだった。
 いや、残念。

 今後は、池袋まで出かけることになるのだろう。
 ジュンク堂とかは、人が多すぎで好きになれないのだが、この際好き嫌いを言っていられる立場ではない。
 amazonで間に合わせるのもなんだかシャクだし。
 それに、このうえ外出先として本屋まで失うようだと、それこそマジなヒキコモリということになってしまうから。

 出版不況……についてはノーコメント。
 砂に頭を突っ込んでじっと耐えるのが賢明な出版人の処世なのだと思う。
 もがいたり動いたりする奴が先に死ぬ……と、こういう場合は山岳遭難における危機対応マニュアルを援用するのが正しいはずだ。
 というのも、我々が直面している事態は、「不況」(つまり、好況とワンセットになっている循環的な景況概念のうちにある一時的停滞状態としての不景気)と呼べるような生やさしいものではなくて、恐慌、氷河期、ないしは隕石衝突みたいな、むごたらしくも血なまぐさい非常事態だからだ。こういう状況に追い込まれた時は、雪洞でも掘ってビパークするしかない。いずれその雪洞の中で凍死するのだとしても。

 昼食後、気を取り直して赤羽の書店におもむくも、ここでもちょっとびっくりさせられる。
 店中、細木&江原の顔だらけだったから。
 まあ、中規模書店は、こういう商売をやらないと生き残れないのかもしれない。
 いや、中小に限ったことではない。
 もしかしてオレら出版業界にいる人間は、この先、テレビ霊媒師の下請けで糊口をしのぐことになるのやも知れぬ。
 オーラの泥沼。
 スピリチュアルの下水。
 霊感の肥溜め。
 野壺カンタービレ。
 テレビんぼの終わらない夜。
 って、上のは4月刊行予定の読売ウィークリー連載単行本第二弾の書名候補のひとつです。わかりにくいかな。
 と、うまいこと宣伝に着地したところで、今日のところは店じまい。
 手をひろげ過ぎないのが長続きの秘訣、と。
 ははは。

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コメント

>こういう場合は山岳遭難における危機対応マニュアル

 コンロもテントもチョコバーすらなく裸一貫で冬山に突貫してしまった自分はもう20年環状彷徨しているですよ(~_~;)。雪は更に激しく降り積もり……。

投稿: えいじ | 2008/02/16 03:10

埼京線の北与野駅前のブックデポ書楽は新宿紀伊国屋レベルの在庫ですよ。とにかくすいてます。

投稿: カーステでレベッカ | 2008/02/16 07:04

そりゃ本屋、潰れますよ。
出版不況は、宿命といいますかね。
本の売り方がなってないですよ。
CD屋も困っているようですが、それでもCD屋の店員は
まだ音楽を知っていますよ。
最新のヒットから世の東西、ジャンルを問わず。
カーティスフラーどこ?って聞いたら速攻案内してくれ
ましたよ。
某芥川賞作家の本どこ?って聞いて、タイトルも言ったのに
探しきれませんでしたからね。超大手で。
そりゃamazon伸して来ますよ。
出版社なんて本買う人が気にするんですかね?
CDがレーベル別に並んでいたら・・アリエナイでしょう。
基本CDはあるアーティストが今回はsony、次回はMGMなんてないです。
でも本は今回xx社、次は○○社ってありえます。
ならなおさら出版社別って意味ないですよ。
BOOKOFFにはいろいろあるのでしょうが、著者別50音
に並べるってコンセプトはいいと思いますよ。

投稿: slider | 2008/02/16 11:43

私のブログも読んでください。私は、ノーベル経済学賞候補です。私のブログには、経済学の学説の他に、知能指数を高くする方法も書きました。私のブログを読んで、実践すれば、貴方も知能指数が高くなります。皆も知能指数を高くしたくないですか? 私の知能指数は150以上です。

投稿: ノーベル経済学賞候補 | 2008/02/16 19:03

前のエントリがエントリだっただけに……ビックリさせないでくださいよ。(^^;

このブログが終わるのかと思っちゃいました。


投稿: hietaro | 2008/02/17 02:02

はじめまして。
いつも楽しく読ませていただいております。
せーの、えっ!!「書泉ブックドーム川口店」無くなってしまったんですか!?
地元なのですが、現在、海外で生活しているため全然知りませんでした。
丸井インテリア館からいつのまにか本屋になっていた時も驚きましたが・・・。
帰国のたびに立ち寄っていた憩いの場所だったので、残念です。
そごうに行くしかないんですかね。
ひょっとしたら、帰国した時に、昼下がりに川口をブラブラしている小田嶋さんを見かけることができるかも知れないと密かに期待をしていたのですが・・・。
これで小田嶋さんが「キューポラのある町」(事実上死語ですが、私が子供の頃はまだありました)に来られる頻度が下がってしまいましたね。残念。
以上、地元ネタで失礼しました。

これからも読む者がインテリであればあるほど面白い「偉愚庵亭憮録」楽しみにしています。

投稿: Gotti | 2008/02/17 15:18

大阪で飲んでいたら、キューポラのある街を川崎のことだと言うガラの悪い中年親父と遭遇。突っ込みを入れる気にもなれず。

投稿: o-tsuka | 2008/02/18 02:21

本が売れない。CDが売れない。車が売れない。
要するに、いろいろと売れていないわけです。
孫正義の仕業か、それとも折口雅博の搾取による結果なのか。
書籍離れは世界的にも進んでいるようですが、それは言うまでもなく
インターネットの発達によってもたらされた必然的な帰結でしょう。
無償で読むことが出来る活字が、世界中に溢れかえっているのです。
ある地方の中堅チェーン書店は、実験的に古本販売を始めたそうです。
同一店舗内で、新本と古本を並べて販売するといった倒錯ぶりで
もちろん、この試みは「活字文化の復興」といった高尚な営みではなく
自社の生き残りを賭けた「見境のない悪あがき」でしかありません。
ブックオフなど新古書店への対抗手段のつもりなのでしょうが
今や、そのブックオフ自体の経営が傾きつつあるようです。
来ない春をひたすら待つのか。春を求めて人里まで降りるのか。
皆さんも御承知のように、こんな時代でも売れている本はあります。
○○の品格といった浅薄な啓蒙本、タレントの自伝、携帯小説等々。
いずれも、文字が印刷されている、れっきとした書物です。
馬鹿にしてはいけません。そもそも、インテリを相手にした
ベストセラー本がこれまで存在したのか? といった話でもあります。
草思社(*)のように、むざむざと凍死してはいけないのです。
小田嶋さんには新境地を開拓していただき、金儲けは主にそちらで、
既存の読者には「出血覚悟の大盤振る舞い」を続けていただく。と。
それで万事解決ではありませんか。

*『カッコウはコンピュータに卵を産む』には興奮しましたなあ。
グレイトフル・デッド!!
『間違いだらけのクルマ選び』が再開されるという噂。
草思社復活のために御大が一肌脱ぐ、と捉えるべきか
それとも、遅すぎた罪滅ぼしと見るべきか……

投稿: epitaph | 2008/02/19 18:26

「閉店」した書店ですが、ついに何かビル工事がはじまるみたいですよ。
どうなるかは判りません。
①またまたパチンコ屋
②またまたタワーマンション
どちらにしてもorzなことに変わりありませんが。
50万都市(笑)の玄関口で書店が文教堂だけなのも情けないです。 

投稿: 留守番 | 2008/05/14 00:22

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