アーミーナイフ
ロックバンド「JAYWALK」のボーカル、中村耕一メンバー(56)が乗用車の中でアーミーナイフを所持していたとして、警視庁目黒署が銃刀法違反容疑で書類送検していたことが28日、分かった。「1年ぐらい前にキャンプに行き、置いたままだった」と話しているという。
中村メンバーは今年6月8日未明、東京都目黒区青葉台で、同署員から職務質問を受けた際、乗用車内に刃渡り8.5センチのアーミーナイフを所持していた疑い。助手席にくくりつけてあったという。(後略)――12/28 産経新聞
ん? 刃渡り8.5センチのアーミーナイフ?
って、たったの8.5センチだろ?
大きさからして、「アーミーナイフ」と呼べるような代物ではないと思うんだが。
っていうか、いったいどこの国の陸軍が刃渡り8.5センチみたいなちっぽけなナイフを武器に採用するんだ?
……と思って調べてみたところ、「アーミーナイフ」というのは、名前の響きこそ禍々しい(←直訳すれば「軍用刀」だからね)ものの、その実態はおよそ牧歌的な小鉄器であったようで、ウィキペディアの解説では アーミーナイフとは、軍隊が制式採用している、戦闘以外の日用的な用途に使用するための多機能な折り畳みナイフを指す俗称である。 てなことになっている。つまり、十徳ナイフだよね。ビクトリノックスとかの。ほら、缶切りやらネジまわしやらがゴチャゴチャ付いてるアレですよ。
ナイフとしての用途もリンゴの皮剥きぐらいが限界。あるいは釣り糸を切るとか、せいぜい鮎をサバく程度。とてもじゃないが、こんな矮小な刃物じゃ中型以上のサカナはサバけない。まして人間を相手に害をなすだとか、護身に役立てるなんてことは不可能……だと思うんだが、それはそれとして、法律を厳密に解釈すれば、鉛筆削り用の折り畳み工作ナイフであっても、刃渡り6センチ以上の刃物を「正当な事由なく持ち歩」いている人間は、銃刀法違反で検挙可能であるらしい。っていうか、刃渡り3センチのキーホルダー型ナイフであっても、軽犯罪法で引っ張ろうと思えば引っ張れるわけだ。おそろしいことに。
ちょっと前から気になっているんだが、ここ数年、このテの微罪逮捕が目立つ。
あるいは、オウム事件をめぐるドサクサの折に、「歩道上で不必要に立ち止まっていたから道路交通法違反」みたいな調子の別件逮捕を容認する市民感情が形成(←「オウムみたいな連中を取り締まるためなら、多少の無茶は仕方ないよね」みたいな感じで)されたことで、警察の皆さんは調子に乗ったのかもしれない。
というよりも、もっと単純に言って、彼らは検挙率を上げるための点数稼ぎに走っているということなんだろうか。
いずれにしても、クルマに十徳ナイフが積んであったぐらいなことで、逮捕されて、書類送検されて、しかも、その事実を全国紙にリーク(←記事にされてるってのは、そういうことだよね?)され得るのだとすると、無事で済む人間はそんなにいないんではなかろうか。
逆に、警察の側からすると、気にくわないタイプのプチ有名人とかは、どうにでも料理できるってなことになる。 オレも注意しないといけない。
実際、クルマに何が積んであるかなんて、まるで把握してないわけだし。
でもさ。クルマのトランクとかコンソールボックスというのは、そういうふうな「通常はまず使わないんだけど、万が一のために一応用意しておく」みたいなものを保管しておくべき場所だったんじゃなかろうか?
たとえば、緊急時脱出用のハンマー(←クルマが横転したり、水中に落下した場合には、フロントガラスを破壊して脱出するほかにどうしようも無いんだそうだぜ)みたいなものも凶器と認定される可能性はあるわけで、そういうものをドアポケット(だって、手が届く範囲に常備してなかったら緊急時の脱出には使えないだろ?)に放置したまま都内を走っているオレは、ある日突然逮捕されるんだろうか。
いや、そんなことより、自転車移動の折に持ち歩いているリュックの底に、スケッチのための色鉛筆と鉛筆削り用の折り畳みナイフを常備している男であるオレは、おそらく、そう遠くないある晴れた日の午後、突然職質を受けて、軽犯罪法違反か何かで逮捕されることになるわけだよ。でもって、即日書類送検されたあげくに、鵜呑み系社会部記者が書き飛ばす記事のネタにされて、ちょっとした地元の有名人になる。で、マンションのエレベーターに同乗した近所のおばさんの詰問じみた視線に耐えながら、残りの半生を猫背で暮らして行くことになるのだな。美術愛好家であるというそれだけの理由で。悲しいよな。考えるだに。
中村耕一メンバーは、ぜひくじけずに頑張ってほしい。
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