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2007/09/26

停滞

 仕事が滞っている。
 ブログを更新している場合ではない……のかもしれない。
 が、タイピングのリズムが停滞しているこういう時にこそ、ブログを更新するべきだ、というふうに考えることもできる。
 ほら、よく言うじゃないか。呼び水とか誘い水とか魚心あれば水心とか我田引水とか焼け石に水とか低きに流れるを以て尊しと為すとかなんとか。
 ということで、ご迷惑をかけている編集者の皆さんには、もう少しだけお待ち下さい、と、この場を借りてお伝えしておきます。いや、申し訳ない。

 安倍さんの退任会見を見た。
 痛ましいの一言ですね。
 安倍さんについては、これまで、様々な場所で皮肉を言ったりダメ出しをしてきたわけだが、ああいうカタチでモロに弱った姿を見せられると、正直、心が痛む。
 言い過ぎたんではないか、と。
 いや、私の舌鋒が鋭かったから安倍さんがあんなふうになったとか、そういう話をしているのではない。私はそこまで思い上がっていない。オダジマが何を言ったところで、どうせ永田町には届かない。せいぜいが池袋か目白。っていうか、私の言葉は、私の部屋の中で反響しているだけだよ。
 私が言いたいのは、安倍さんは、ああいう立場(日本中のあらゆる階層の人々が発する思い思いのダメ出しを浴びねばならない首相という立場)に立つには、人間がマトモ過ぎた、ということだ。
 きっと、生まれてこの方、かほどにひどい舌鋒の中で暮らしたことはなかったのだと思う。
 だよな。
 だって、筋目のプリンスなんだから。
 権力の頂点にさえ立たなかったら、きっと、誰もがこれまで通り、大切に扱ってくれたはずだ。
 結局、お公家さんの世界に居るべき人だったということだ。
 で、
「麿は賛成でおじゃる」
 とか言って、ホホホ笑いをしつつ安逸な老後をむさぼるべきだった、と。
 衣冠束帯とか似合いそうだし(イラスト略)。

 会見の時の安倍さんのあの表情の乏しさには見覚えがある。
 安倍さんは、自分とほぼ同年配(オダジマの方が2年ほど若い)なので、なんとなく見当がつく気がするのだが、たぶん、鬱状態なんだと思う。詳しい診断名はともかく、あの、独特の生気の無さは、私が直接に知っている鬱の人たちの表情にとてもよく似ている。
 この三年ほど、同級の知り合いの中に鬱病患者が俄然目立つようになった。
 ホルモンの関係なのかどうか、とにかく、そういう巡り合わせの年頃になってきたということなのだと思う。他人ごとではない。
 
 私自身、この三日ほど、ちょっとふさぎ込んでいた。
 ええ、ちょっとイヤなことがあったのでね。
 どんなことかって?
 時期がきたら説明するかもしれない。
 思わせぶり?
 まあ、そうだね。
 でも、話す気持ちになれないのだよ。
 面倒くさいし。
 
 とにかく、そんなわけで、この連休の間は、減量を中断して、クッキーやらプリンやらを食べていた。
 つまり、アレだよ。酒をやめたことから生じた数少ない不利益のひとつとして、今回のように何かの事情で意気阻喪した折りに、一人前の男として、サマになる荒れ方が見つけにくいということがあるのだね。
 でも、カタチはともかく、ポイントは、だらしなく甘いものを食べて、自分を甘やかすところにある。
 ぜひ、そうしないといけないのだよ。
 あんまり追いつめるとロクなことにならないから。
 安倍さんを見てもわかる通り、50歳は危機だからね。三島も太宰も裕次郎も水原ひろしも、みんな五十歳前後で瓦解している。いや、オレは三島や太宰みたいな偉い人間ではない。でも、偉くなくても才能が乏しくても、人間のデキが凡庸でも、五十歳は五十歳で、危機は危機なわけだよ。

 こういう時、自転車はありがたい。
 少なくとも走っている間だけは、心の中に風が通るような感じがするからだ。
 別の言い方をするなら、自転車は、移動手段である以上に、思考のツールとして優秀だ、ということだ。
 どういうことなのかというと、机の前や布団の中で考えることと、サドルの上で考えることは、全然別だということで、だから、何かで考えが行き詰まった時には、机から離れて、自転車に乗ることが解決につながる場合があるのだよ。
 解決にならなくても、ごまかしにはなる。
 で、しばらくの間ごまかせれば、それは、事実上解決したのと同じことになる。
 オレら現実主義者にとっては、ということだが。
 
 そんなわけで、この三日ほど、無駄に食べて、闇雲に走って、仕事を滞らせていた次第だ。
 無駄な人生だと?
 そうだろうともさ。
 でも、根を詰めてクラッシュした人がいたことを、あんたらだって知らないわけじゃないだろ?
 美しい国の強いリーダーにだって、うんざりする瞬間はやってくる。
 そういう時は、無理をしないで、自分を甘やかす。
 オレはそうしてきた。
 な、安倍ちゃん。
 自分の甘やかし方なら相談に乗るぜ。
 

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コメント

 小田嶋さま。山本権兵衛大将ってご存知ですか?戦前の総理大臣ですが。
 軍政には見るべきものがあったそうですが、要するに事務屋であって、東郷平八郎元帥のように、大した手柄を立てたわけではない。
 しかし、キャリアが無闇に長いので、海軍の長老で、下にもおかぬ扱いを受けてきた。どこへ行っても、「閣下、閣下」と呼ばれ、ずっと大事にされてきたのです。
 しかし、桂内閣の後を受けて、組閣の大命を受けて総理大臣になったとたん、折り悪く、海軍の一大汚職”シーメンス事件”が発覚して、議会では弾劾上奏文が可決される、日比谷では政府追求の国民集会が荒れ狂う、マスコミからは、自分は絡んでいなくても海軍の長老として責任はないのかと追求される。
 毎日毎日バッシングされて、1年余りで政権を投げ出したのです。奇しくも安部内閣と同じ寿命でした。
 山本は、
「後にも先にも、あれほどひどい言葉で悪口雑言されたのは、生まれて始めてだった」
と後に述懐しました。

 教訓にすべきは、一国の元首は、1億2700万の感情と利害が集中し、一挙一頭足を全部批評され、ちょっとでも失敗すると、すさまじい非難があびせられる厳しい仕事なんで、よほど名誉欲や自己顕示欲の強い、特殊な人格の持ち主でないと務まらないってことですね。彼らが普通の人間であるわけがない。小泉も特殊なキャラクターです。安部は不幸にして、「普通の人」だった。

投稿: Inoue | 2007/09/26 05:10

>あんまり追いつめるとロクなことにならないから。

「政治家と公務員はいくらバッシングしてもいい」
とマスコミは思っているらしいですが、松岡利勝農水相のように、自殺してしまう人もいますから、決して傷ついてないわけじゃない。
 私は安部が自殺するんじゃないかと期待^H^H心配しておりました。確かに辞めるタイミングは最悪でしたが、無理に続けさせたら命の危険があったかもしれない。

投稿: Inoue | 2007/09/26 05:21

↑こういうやつらがのさばってると、「真実を暴くことの重要性をヒシヒシと」感じます。だがやるべきことが多すぐる。

とりあへづ上州はからっ風のかかあ天下首都圏九州出張所政権になったために出張所であるからして本舗よりマシだと判断し、第何番目かの封印解除、TeXを所得すますた。ダータロハであるもんで吃驚。無事DLインスコでけました。次は好きなフォントを使えるよーになりたいでふ。師には多大なる恩義が御座居まする故、コミケに私小説のコピー本オフセ本などお作る折など、無償で版下制作さしていただきまふる。量制限などいたしませぬ、もとより入力とレイアウトは大好きなのであるまふ。近頃のTeXはおとろしいでおまふ、画像好きなだけ貼れまふ、色も御座れ、問題は拘れば拘るほど、1頁に人生丸ごと費やせかねないとこしょうか。

背水の陣内閣。俺アやけっぱち内閣に見えますが

慢心せないでGO。俺が小心翼々さを切らしていいことになったこと皆無でおまふる。ですので本エントリもry

投稿: IE7遣い | 2007/09/26 05:40

 編集者って、仕事が滞っている時に呑気に普通にブログとか書いていると猛烈に怒るんですよね(ーー;)ボソッ。
 でも貴方、キーボードの前で謙虚に閉門蟄居してりゃ筆が進むとでも思っているの? それとも貴方はせめて筆が進まないお詫びの印として閉門蟄居を求めているわけですかぁ~、みたいに思うわけですが。

投稿: えいじ | 2007/09/26 09:24

1956年生まれ、ただ今絶不調。田中小実昌さんの「人生は短いらしいが一日は長い」という名言が身にしみます。ママチャリしかありませんがちょっと遠出でもしてみます。

投稿: center | 2007/09/26 15:46

男性更年期障害だったりして。

投稿: かくた | 2007/09/26 19:05

ボロカス言われるのも給料のウチだと
思うんですけれど。
名誉もあるし、薄給じゃないし。
下手撃てば歴史に残るし。
つまり高給で政治家を雇うわけで。
サッカーなら外国人監督やら選手やらいて
SONYだって日産だって外国人経営者な訳ですよ。
でも流石に政治家はゴルバチョフやサッチャー(古いな)
雇うわけにも行かないでしょう。
日本の政治家は日本人しかなれないのだから、
ある意味優遇されている。競争が少ないわけですから。

投稿: slider | 2007/09/26 21:28

 原稿を受け取りに来た編集者を地獄に突き落とした
  

  
   「嘘をつかなきゃいけない僕の身にもなってください」
 
 
  
という伝説の開き直りを知っているファンとしては、欝だとかスランプというより「これこそが小田嶋の真骨頂」とか思ってしまうのですが・・・。
笑い事じゃないですね。失礼しました

投稿: からこらむ | 2007/09/27 00:20

 うん、小田嶋隆も昭和人だったんだよね。え~ん、(西原)理恵子、泣いてお家(うち)に帰るぅ~

投稿: あおきひとし | 2007/09/27 02:51

マンガ家とりみきがチャンピオン連載時代に、編集者と連絡がつかなくなって、編集者が自宅に行ってみたら、
「今週は落とします。るんるん」
と張り紙してあって、唖然としたそうです。編集長は「俺の目の黒いうちは、とりみきは使わない」と言い放ったらしい(いしかわじゅんのエッセイマンガから)

投稿: Inoue | 2007/09/27 07:47

どっちもInoueくんだったのだな。うむ少しけんか腰であった。しかし左翼に詳しいくせにその審実眼のユルさは故意かと思うほど。ひょっとしてこれが故意かしら。

日本丸日常への帰還乙、これからおちょーしものの落とし前回収作業が全国的にはじまるわけですけど

もう手加減抜きでばんばん真実を調査してよいものかしら。だめ。それだと日本くんが消滅してしまう、だからだめ。統一朝鮮が成立してからにしやうと考える。

投稿: FF2遣い | 2007/09/27 08:24

 阿部首相退陣の直後に、阿部氏は、海洋性じゃなかった(^_^;)、潰瘍性大腸炎だったという報道がありましたが、アッという間に消えましたね。ガセネタだったんでしょうか?潰瘍性大腸炎は根治できない難病なので、そもそも総理(または政治家)になるのが適切だったかという話も見た気がするんだけど……。
 現在の体調が報道されているとおり(ま、鬱状態はあるけど言えない、っていうのはあるかもしれないが…)ならいいですが、潰瘍性大腸炎の悪化だったりすると、そのまま長く入院とか、難しい方向にいっちゃったりすることもありますね。
 あ、なんか、阿部擁護に見えるかもしれないけど、無茶苦茶な法律を通して、そのまんま辞めるっていうこと自体許せないです。代わった福田総理も超タカ派で実は暴言も多いわけだから、日本の総理って人材がいないのだなぁ、と悩む今日この頃……(;/_;)。

投稿: jokerman | 2007/09/27 09:51

>酒をやめたことから生じた数少ない不利益のひとつとして、今回のように何かの事情で意気阻喪した折りに、一人前の男として、サマになる荒れ方が見つけにくい
  
薄暗いバー。
安物のスピーカーから流れるジャズ。 
  
カウンターに座る客ひとり。
人生の全てに疲れた感じの中年男。
ハゲかかっている頭。
よれよれのスーツ。
くたびれた靴。
 
その中年男は注文する。
 
「カルピスのソーダ割り。……あとプリン」
 
確かにサマになりません。

投稿: す、すみません。つい。 | 2007/09/28 00:03

*クレーム・ド・マント1/2パイント
*ホイップクリーム適量
*輪切りパイナップルひときれ
*チェリーいっこまたはにこちゃん

"End of world delight"。

いつか飲むことが夢やったけどもう夢の儘でゑゑわゐと思い始めてる。

投稿: FF2遣い | 2007/09/28 08:23

実はBNN以来の小田嶋さんのファンで、「我が心ICにあらず」なんかを愛読していたりしたのですが、ぼんやりとTVを見ていたら、「小田嶋隆さんです」とかいう紹介があってびっくりしました。無責任な雑誌記事を石原真理子が告発するというふうな番組でした。

でも、編集されたのか、一言もしゃべりませんでしたね。

投稿: Picks | 2007/09/30 00:27

そう言うときは自転車ですよ、って書こうと思っていたら、
すでに、乗っていたのですね。

>>少なくとも走っている間だけは、心の中に風が通るような感じがするからだ

すいません、どうしても引用したかったのです。
コメントは、その通りと言うしかない。

投稿: ベガルタファン | 2007/10/05 09:18

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