サウジアラビア戦雑感
残念。
でも、白熱した好試合だったと思う。
以下、うまくまとめる自信が無いので箇条書きで。
- 横パス、バックパスが多いのはポゼッションを志向する以上、ある程度はガマンせねばならない特徴なのだろうが、後半の追い上げるべき時間帯でディフェンスラインに戻すパスが目立ったのは残念。
- 横パスが失速して敵に奪われるケースが何回かあった。
- グラウンダーのパスが伸びないのは、芝の仕様だろうか。っていうか、熱帯の芝は、コシが強いのだな。あるいは、雑草が混じってるのかもしれないが。
- Jリーグの芝は、世界的に見ても上質(どのスタジアムに行ってもある程度平準化した質の芝が用意されている。イタリアあたりでも、貧乏チームの芝はひどい)なのだと思う。
- ついでに言えば、Jリーグの芝は、丈が短いのかもしれない。で、弱いパスでもそれなりのプレーができたりしまったりする。良いのか悪いのか。
- ドリブルに弱いのは、これは戦術の問題ではない。
- 9番のあいつみたいなタイプのドリブルは初見では止められない。
- エメルソンを思い出した。
- Jリーグの賢いディフェンダー陣は、何回かブチ抜かれるうちに、「どの時点でファールをすべきか」ということを折り込んだ上でのエメルソン対応を各自編み出していたが、そういう作業をトーナメントの一発勝負で期待するのは酷なのだろうね。
- とすると、あのテのドリブラーには、人数をかけるほかに対応法がないのかもしれない。
- いずれにしても、サウジはイヤなチームだった。中東のカウンター戦術は、前線に速い選手か巧い選手がいると俄然やっかいな代物になる。今回のサウジは、たぶん近年の最高傑作。
- サウジのようなチームに対して、ヨーロッパのチームは、「体格で押しつぶす」という簡明な作戦を押し通すことができる(日韓W杯における、ドイツ対サウジ戦は、無残だった。ラグビーチームとハンドボールチームのサッカーみたいだった)。うちの国にはそれができない。残念。
選手寸評
- 今日の高原はハズレ。ドリブルは抜けないし、トラップもパスもほんの少しずつズレていた。ストライカーにはこういう日がある。でも、調子の悪い日のロナウドあたりとと比べると、守備ができる分だけ優秀だ、と、日記にはそう書いておくことにする。タカよ。自分で自分の言葉に返事をするクセは、あれは、ストライカーとしてはアリでも、テレビ解説者としてはナニだぞ。
- 巻はあんなもの。前線の守備要員&ファールゲッターとして上々に機能していた。この上得点まで求めるのはぜいたく。
- 俊輔も今日は若干ハズレの日だった。俊輔が後ろに下がるからチームが苦戦するのか、あるいは、中村俊輔というプレイヤーはチームが苦戦しているとポジションを下げてしまうクセを持っているということなのか、とにかく、今日のゲームでは、下がった位置にいることが多かった。ボールタッチも少なめ。っていうか、終盤は消えてました。
- 遠藤はいつもの通り、要所で効果的にボールをサバいていた。でも、なぜなのかシュートをこわがっている。専業農家のヨメみたいに。
- 駒野はとてもよく頑張っていた。後半、バックパスが多くなったのは、たぶん本人のせいというよりも、周りがバテたせいなのだと思う。
- 加地君は、残念ながらキング加地の日ではなかった。
- 啓太は啓太。貧乏な大家族のおかあさんみたいに八面六臂でがんばっていた。こんなに頑張っている選手にプレーの正確さを要求するのは、11人家族にメシを食わせている主婦の料理に、パリのエスプリを求めるのと同じ。フォアグラのテリーヌ? 冗談言うなよ。一升五号のメシを炊いて、寸胴一杯分の味噌汁を毎食作っているおかあさんに向かって、バチ当たりなこと言うなよ。
- アベっちは、センターバックではない。なのに、会う監督会う監督が、みーんなセンターバックをやらせたがる。きっとそんな雰囲気を持ってるんだな。競り合いも強いし、ロングパスも正確だし、危険察知能力も抜群だから、とかで。でも、アベちゃんはセンターバックではない。だから、とどかないボールにはとどかない。アベちゃんのせいではない。山羊に荷車を引かようとした牧童がアコギ過ぎただけ。
- 川口については、私はよくわからない。鬼のようなセーブをするかと思うと、簡単にニアを抜かれていたりもする。いや、今日はノーチャンスだったのかもしれない。いずれにしても、私には、キーパーのことはよくわからない。顔色でしかプレーを判断できない。で、今日の顔色は、ちょっとイキ過ぎに見えた。いや、このヒトの場合、テンパってナンボなのかもしれないが。わからん。
- ケンゴは、よくがんばっていた。試合前からバテて見えるのは仕様。
- 中澤はボンバーだった。あんなにヘタだったナカザーが、こんなに頼もしくなっている。オレもトシを取るはずだ。お前もな。
- 寿人は時間がなかった。佐藤寿人にはいつも時間がない。たっぷりと時間があって、スペースがあって、駒野が右からクロスをあげてくれる状況だったら、もっとやりようがあったと思う。でも、そういう機会は代表では訪れない。
- 羽生については、ETみたいだなあ、としか思ってなかった。あんなミドルが打てるなんて思ってなかった。ごめん。あやまる。
- 矢野君は、短い時間ながら、的になっていた。えらかったと思う。シュートなんて、そんなぜいたくは言えません。
で、オシムだが、私は、今回の結果は上出来だったと考えている。代表チームが進んでいる方向性が間違っているとも思っていない。
いや、本当のことを言うと、幾人かの選手について、選考に疑問を感じる点が無いではないのだが、そんなことは瑣末な問題だ。
大切なのは、オシムが定着させようとしているサッカーが、日本サッカー界にとって、ポジティブな方向性を持っているということだ。
もうひとつ私が高く評価しているのは、オシムがサッカー協会に対してきちんとスジを通している点だ。
メディアの言いなりにならず、電通の思惑をハズしにかかり、カワブチキャプテンによる視聴率上昇化圧力をハナで笑っている姿勢は、率直に言って立派だ。誰にでもできることではない。
カネや権力にヨワいタイプの人間は、戦術家としていかに有能であっても、代表監督の座席の上で良い仕事をすることはできない。なんとなれば、代表監督というのは、選手を動かす前に、利権に群がってくるハイエナや、光に集まってくる蛾みたいな連中を退治するところから仕事をはじめねばならない、一種の清掃業者だからだ。
オシムはよくやってくれている。
今回の結果を受けて、オシムが、修正すべきポイントを、チームのどこに見出すのかについて、楽しみに見守りたいと思う。
結果が出てから言うのもナンだが、アジア杯の結果は、フェータルなものではない。
アジア杯では、戦術云々よりも、チームスピリッツが醸成できれば最低限の仕事は果たしたと考えるべきだと思う。というのも、サッカー自体の内容を問うには、アジアのピッチは腐り過ぎているから。審判も、スタジアムも、気候も、スケジュールも、大会運営も、アジアの芝の上では、あらゆる要素がサッカーをスポイルしている。そんな場所で行われた泥んこレスリングみたいなサッカーで、代表監督やチームのメンバーにダメ出しをしてはいけない。
もちろん、劣悪な環境下で実力を発揮するということも、その国のサッカーの実力を示すひとつの側面ではあるのだろう。
が、私はそういうタイプの実力をあんまり重視しようとは思わない。やはり、自分の国の代表には、きちんとしたサッカーをやってほしい。できれば、きちんとした芝の上で。
というわけで、「絶対に負けられない戦い」という前口上は、W杯予選用に順延することにして、今日のところは寝よう。
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コメント
初めまして。
いつも楽しく拝見させていただいてます。
オシム代表メンバーへのコメント、最高ですw
オシム監督についての見解もほぼ同意です。
メンバー選考にはかなり不満ありますけど。
小田嶋さんには、最近の小野伸二のプレーぶりについてどう感じているかお伺いしたいです、非浦和サポ系小野ファンとして。
投稿: divaio | 2007/07/26 10:19
楽しい!面白い!やはり小田嶋さんのサッカー評は素晴らしい。
>シュートをこわがっている。専業農家のヨメみたいに。
三回読んでようやく分かりました(笑)
投稿: N | 2007/07/26 10:51
>シュートをこわがっている。専業農家のヨメみたいに。
うはは。Nさんのコメントでやっと理解できたよ。
正直言ってアジアカップはもう一年後に見たかったですね。
北京の圧力で早期開催されたのでしょうが、全くもって迷惑な話です。
投稿: トコリ | 2007/07/26 13:57
楽しく読ませていただきました。実に言えてる!という寸評ばかりです。
コンフェデに出られないのがなあ、と思っていたのですが、南アフリカって、本大会だって怪しいのに一年前の大会なんか出来るのか?2年後ですよ。
ここからの一年くらいで見通しが立たないとW杯開催も危ぶまれるし、決定なら決定でもいいけど一年前の大会で治安が保証されるとも思わない。
もし逃すならこのコンフェデでいいのかも、と思えてきました。
投稿: えむ | 2007/07/26 14:19
朝方のワイドショーで松木某太郎が
・選手はオシムの言うことばかり聞いている。
・エレガントだの、オシムは何を言っているかわからない。
と申しておりました。
選手はオシムの言うことをばかり聞いているなら、オシムの指示は
的確に選手に届いており、互いの意思疎通に問題ないということです。
また何を言っているのかわからないのであれば、上記から選手がオシム
の言うことばかり聞いている以上、わからないのは松木だけと言うこ
とになります。公共の放送で「私は選手より頭が悪い人間です」と
宣言したことなり、まことに結構です。人間正直が一番です。
また「日本人でどうでしょう?」とも言っていました。
協会、J、J以外(高校・大学)などのスタッフやフロントそして
メディア関係。引退後のサッカー関係の主な就職先です。
恐らく一番遠いのがメディアなのでしょう。就職活動の一環なのかも
しれません。日本人になった際「俺にもオコボレくれよ」って感じ
でしょうか。それはそれで立派な態度だと思います。
仕事を求めてなりふり構わないのは決して恥ずかしいことではあり
ません。
賢者は歴史に学び愚者は経験に学ぶ、とあります。
私なりに解釈すれば、馬鹿は同じ失敗を繰り返す、になります。
ファルカン解任後、加茂になった際「日本人同士意思疎通に問題ない」
との理由からだったと思います。
日本人監督を過去と同じ理由で選ぶこと無いよう希望します。
byヒロヒト
不敬
投稿: slider | 2007/07/26 22:28
何なの『日本代表』って!?
『高原』は日本を『代表』するフォワード。
『中村』は日本を『代表』するミッドフィールダー。
『中澤』は日本を『代表』するディフェンダー。
『川口』は日本を『代表』するゴールキーパー。
『オシム』は日本を『代表』する監督????????
何なの『日本代表』って!?
投稿: 低脳サッカー | 2007/07/27 05:59
協会はフィジカルトレーニングの一環として相撲を取り入れるべきだ
腰の骨が折れても平気でボールを蹴れる強靭な肉体が手に入るから
投稿: ドルジ | 2007/07/27 19:31
>低脳サッカー
MTFOさんのところにも出てきて馬鹿なことを書いていただろ。
それで、俺はこんなに賢いこと書いたとお思いか?
思い違いもはなはだしい。
それにしても一回負けだけでこんな集団ヒステリーが起こるんだな~。
投稿: あ~胸糞悪い | 2007/07/27 21:57