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2007/06/25

肉の希望

 前の書き込みのコメント欄で話題に上がっている「食中毒自己責任論」の元原稿が見つかったので、掲載します。
 タイムスタンプが2000年7月25日になっていますので、おそらく今は亡き「噂の真相」誌の2000年8月号か9月号(8月初旬売りの分)に掲載したものだと思われます。

 ※雪印加工乳:?円(すんません、正式な価格がわかりません)

 たしかに、雪印の台所は、汚れていた。
 が、世間にはもっとひどい例がいくらもある。事実、一流レストランの厨房だって、仔細に点検してみればゴキブリだらけだったりする。ただそのゴキブリを、われわれが砂にアタマを突っ込むダチョウよろしく、あえて見ないように努めているだけだ。別の言い方をするなら、清潔というのは、台所を隠す料理人と、台所から目をそらす客が共同正犯で支えている一種の幻想なのだ。
 その昔、私のまわりにいた貧乏下宿学生の常識では、たとえば「村裂き(仮名)」の刺身を食って腹を下した場合、悪いのは腹を下した学生の方であった。
 基本的には、そもそも「村裂き」なんかで刺身を注文すること自体が不見識と見なされたということだが、でなくても、たったの六百円で皿一杯に盛られて来る刺身を食べる場合、責任は客の側が担うべきだというふうに考えられていたわけなのだ。
 私自身は自宅通学のお坊ちゃま学生だったので彼らほどワイルドな食生活になじんでいたわけではない。が、それでも腹を壊した時に店を責めるような卑怯な考え方は採らなかった。
 腹を壊した時は、まず第一に、アヤしい刺身に当たり負けした自分の消化器系フィジカルの弱さを恥じ、第二に刺身のヤバさを見分けることのできなかった味覚および嗅覚の鈍さを反省し、第三に、マズいと思いながらも残さずに食ってしまったおのれの賎しさと貧しさを呪う――と、そうするのがスジだった。要するに、当時、食品の安全は、供給側にだけ責任を負わせて済むタームではなかったのだ。アヤしい食い物を自らの努力と才覚で排除しつつ、そうしながら、極力安価な栄養を摂取して行く過程がすなわち食の経済化であり、生存の鉄則であり、ひいては学の独立だったのである。
 むろん、こんなものは、二十年前の、それも貧乏学生の常識に過ぎない。が、その滅び去った旧世代の常識からすれば、現代の日本人が抱いている衛生概念は、それ自体が病気なのである。
 たとえば、雪印が返品された製品を再加工していた事実に対して、「地球に優しい」という視点から評価したメディアは皆無だった。こんなことで良いのだろうか。
 だって、九九パーセント大丈夫な食品を、問題追求で点を稼ぎたがっているマスコミやら、ここを先途と消費者の味方ヅラをしてみせたがるスーパーやらの顔を立てるためにみすみす廃棄するって、これ、地球環境に対して思いっきり失礼ですよ。
 実際、新鮮でなくてもオッケーだという消費者は私をはじめ、たくさんいる。
 なんとなれば、食品の安全性なんてものは、食べる側の事情でどうにでも変わってしまういいかげんな目安に過ぎないからだ。
 ひとくちに消費者と言っても
a. 酸っぱい牛乳を飲んでも、糸を引くメシを食っても大丈夫な消化器系エリート。
b. ヤバい刺身やアヤしい肉を自分の舌で識別できるまっとうな人間。
c. 出されたモノを無批判に食ってあっさり腹を壊すバカ。
d. 糖尿病の患者や食品アレルギーの持ち主。病中病後の免疫弱者。
 と、色々な層がいるわけで、とすれば、食品の安全性にも、それに合わせた幅があってしかるべきなのだ。
 現在、メディアが騒いでいる「安全」の基準は、Cの「バカ」に準拠したものに限られている。嘆かわしいことだ。
 彼らは、表現の自由だとかについては最大限の自己裁量を主張しているくせに、食品については、統制を望んでいる。
 食品の安全基準で見れば、新聞なんかは一発アウトだよ。添加物だらけなんだから。
 「噂の真相」? うーん、ゲロのリサイクルはどうなんだろう。薬物扱いかな。

 
 結局、雪印はツブれましたね。合掌。
 ちなみに、現在騒がれている「ミートホープ社」の事例は、雪印の場合よりもずっと悪質だと思っています。もちろん、不二家の例と比べても。
 でも、社会保険庁よりはマシかな(笑)。

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コメント

エムペリエル・サヴィッヂ。EMPEIRiEL SaVeGe.帝國野蛮人。

でもそれに反抗して俺田舎文明人じゃあ…なんか普通で俺損した気分。

超田舎超文明人くらいかまさないと、自己は満足しなさそでありまする。江川達也さんの公園の屋外AVシアター類型みたいなもんしょうか。且つ 故郷の 訛り無しかし虎ノ門 帰れる港は何時サ回収 的な。

無言劇は何方の歌謡曲だったか、忘れかけてます。忘れてイージャンイージャンスゲージャンなのか、強いても思い出すべきなのか。マア 後二十日くらいは続けようかと。

暫定アルフィーで。ちと重めとも思いまするが。

投稿: MeXi | 2007/06/26 00:37

 再掲載ありがとうございます。
 ミートホープは早々と従業員の総解雇を決めてしまいましたね。でも、年間総売り上げ16億円の会社ですよ。そんなにニュースバリューがあるんだろうか?地方の中小企業の不祥事。それ以上でも以下でもない。

投稿: Inoue | 2007/06/26 08:21

ミートホープは、年金問題から国民の目をそらすために、ここまで大々的に報道されているのでしょうか。

ところで、社会保険庁の問題で、首相以下数名が賞与を返還してましたね。
賞与を返還したくらいで、「一応、責任とったぜ!」みたいな顔をされると、苦笑いするしかないんですけど。

投稿: ほ! | 2007/06/26 10:09

すばらしい!!

スパイスの効いた皮肉でした。
おっしゃるとおりです。

投稿: katae | 2007/06/26 10:12

アノオ 師匠。

ゾディアック殺人事件と、ケネディ暗殺の下手人が、チェ・ゲバラと判っちゃったんですけど…

やめとこっかナア…。とりあえず、ゲバラは射撃の名手で、フルシチョフおやぢとマリリン抱かされたJFKとの手打ちに激怒してて、'63年に外遊してるんす。アルジェリアってことになってますけど。

その辺りから国内政争からつまはじき…離婚…ボリビアで処刑…携わったボリビアン軍人軍医ことごとく不審死乃至精神錯乱。

フィンチャー監督のポスターの暗号文、ゲバラの綴りが辿れるっぽいとこも、ちゃんとあり、○ に ┼ がそもそも、Gを示してる。ズダボロ墜落者の、「俺を死刑にしてくれ」 コテですね。そう考えまする、師よ。勤さん事件の勤さんお手製の暗号は、これより数段手ごわいでありまする。「今田勇子」が「いまたいさこ」とのヒントで、「さいたまこい」までは判りました。嵌められたのですねと見まする。

投稿: MeXi | 2007/06/26 16:56

「肉の希望…どこがダジャレなのやろ… … …アァ。」

俺も鋭いのか鈍いのかゑうワカランとこがありまする。

とりあえず、ワルには疎んじられまくりでありまする。それもコワル。大ワルには ヨウハタラクコマネヅミジャワイワッハッハ 懸念ありまするがそれハそれでありまする。

投稿: MeXi | 2007/06/27 03:09

MEET HOPEってことだったのすね。

凍結してるHOPE計画、解凍されるとよいですねい。

投稿: MeXi | 2007/06/27 05:34

//巨泉・前武のゲバゲバ90分!!//
/「ゲバゲバ」の「ゲバ」は「ゲバルト」(ドイツ語で「暴力」、当時の学生運動などで国家権力に対する実力闘争を表す言葉として多用された。)からきている。当時既に低予算・タレント任せの安易な企画で粗製濫造されていたテレビバラエティ番組に対する警鐘として「ゲバルト」を用いた。小林信彦が命名。/


//小林信彦//
/当時、宝石社に戦前の『新青年』のバックナンバーが全冊揃っていたため、この雑誌を耽読して大きな影響を受けた。/
/1963年1月、常盤新平や萩原津年武、大坪直行ら悪意ある者たちの策謀で宝石社を解雇された(表向きは自主退職)。この時の苦い体験は<信じていた者に裏切られる>テーマとして、以後たびたび小林作品のモチーフとなった。/
/1969年10月以降はテレビの仕事が途絶えたため/

Wikiより転載。ゲバゲバ90分が'69年~'71年で、ゾディアック事件は'68~'74、と。犯行声明は'69ですか。カリフォルニアの最初のカップル殺害が'68夏らしい。

今日観れたら観て来ます。大日本人おもろかったすよ。唯、前半、松さんの監督じゃなくてゴーストディレクターなんすな。それ見破られたんで、おどおどしてたのでしょう。コーカソイドのクリエイター係累、なめすぎたらあかんという教訓を遺してくれました。ずっとハゲにしててくれただけの恩恵が俺にありまする。

投稿: MeXi | 2007/06/27 06:46

いちおう書いておきますと、
雪印食品は牛肉偽装で会社解散しましたが
雪印乳業はまだ営業してます。

投稿: かくた | 2007/06/27 08:51

'66から、だったかな。
なんか、mixiの連中は、記憶力あんましよかないですな。衰えてる俺にも劣るとは。

まあ、彼らの書き込みをあらかじめ読むことが、既知として集中力の指向を助けてくれたのだから、あまり悪し様には言えませんけど。

それにしてもロバートダウニーJr.はかっこえかった。キーファアニキともっぺん共演してくんないかな。ドナルド親父がご存命なら、ウィノナと四人で。

でもおやぢとウィノナの不倫ドラマなら観ないよんさま。そうだなア。

「2007」とか、その辺り。いいねえ。「2006」でも可。

投稿: Ximen | 2007/06/27 18:17

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