« 霊魂と自尊心 | トップページ | 憑依 »

2006/05/17

オーラの泥沼

「週刊現代」が「細木数子――魔女の履歴書」というルポを掲載している。
 執筆者は溝口敦というジャーナリスト。「巨弾ルポルタージュ連載スタート!」と、麗々しく銘打って始まった巻頭連載の今週が2回目で、分量は5ページ(初回は6ページ)。なかなかチカラのはいった好企画だ。細木数子の出生時からの来歴を時系列で明らかにしていくつもりのようだ。素晴らしい。
 ここまで二週分を読んだところでは、既出のお話というのか、ネット上に既に流布している情報が多くて、とりあえず、びっくりするような新事実はまだ出てきていない。
 が、それでも、活字メディアにこれだけ集中的な形で情報が掲載される意味は小さくない。ネットのまとめページに意味がないわけではないが、社会的な影響力や信用度については、活字の力がまだまだ圧倒的だからだ。ぜひ、がんばってほしい。
 というわけで、先週、今週と、週刊現代を自腹購読しているのだが、今日になってひとつ、つまらないことに気づいた。
 せっかくの注目企画に水を差す奇妙な連載記事が、巻頭連載とほぼ同時期にはじまっているのだ。
 タイトルは、「江原啓之 会社のオーラ」。掲載は今回で3回目。江原啓之と編集部員の対話を編集部が原稿に起こす形の記事で、分量は見開き2ページ。
 内容?
 まあ、タイトルだけ見れば見当がつきそうなものだが、要するに「オーラの泉」でやっているお話をサラリーマン向けにアレンジしました、という至極安易な企画です。説明する気にもなりゃしません。以下に今週分の一部を抜粋する。
 著作権? カネが欲しいんなら訴えろよ。受けて立つぞ。

――江原さんには、霊に取り憑かれた人が視えるんですか?
江原:二人羽織のように「未浄化霊」が重なっているのが見えます。
江原:死んだことに気づいていない霊の場合は、電車のホームから何度も繰り返し線路に飛び込んだりすることもあります。
――憑依された人はその道連れになるわけですね。恐ろしい……
江原:問題なのは、憑依現象によって自殺が起きると、未浄化霊が二つに増えてしまい、それぞれがまた憑依現象を起こすこと。倍々ゲームで未浄化霊が増え、自殺者が増えていく。実はそれこそが「自殺の名所」のカラクリなんです。
――なるほど……。
江原:自殺を意識している人だけが憑依されるとも限りません。「ちょっと休みたいなー」と思っているだけなのに死んでしまった、というのはよくあることなんですよ。(以下略)

 念のために状況を説明すると、私の住んでいるマンションでは、つい5日ほど前に、飛び降り自殺が起きている。で、その事実を踏まえた上で、私が、こういうものを読んで、どんな気持ちになるか、週刊現代の編集部の皆さんは、見当がつくだろうか?
 つまり、アレか? オレは、外廊下に住み着いている「未浄化霊」だかに取り憑かれて、飛び降りるかもしれない、と、そういうふうなことを諸君は主張しているわけだな? それも、本人に死ぬつもりがなくても、「休みたいなー」とか思ってるだけで。それが「よくあることなんですよ」、と、オレにそう思わせたいんだな?
 ちっくしょう。冗談じゃないぞ。
 訴訟起こそうかなあ。
 だって、あんまり不愉快じゃないか。
 同じマンションの住民の中には、ショック状態で病院に通っている人間だっているんだぞ。それを、そういう読者が読んでいるかも知れないのに、江原は、「未浄化霊」だのと、こんな無益かつ暴力的かつ脅迫的な概念を、自死遺族をはじめとする、自殺の影におびえる人々に向けて流布宣伝して、それをネタに「カウンセリング」だとかで稼ごうとしている。
 これは、犯罪じゃないのか?
 あぁ? オーラの色だ?
 顔色が悪くなるみたいに、オーラの色がくすんでいるのが私には見えるだと?
 なあ、自分のクソの色をよく見つめてみるといいぞ。
 それがあんたの魂の色だ。匂いも。
 味も、だ。食ってみろよ。
 ん? どういうことかって?
 わからないのか?
 糞食らえと、オレは言っている。
 いいか? 伝えたぞ。

「週刊現代」の編集部は、何を考えているんだろう。
 こんなブタのゲロみたいな連載記事を、担当ライターの文責でなく、編集部の名前でやっているのは、どういう理由なんだ?
 それだけ、自信があるということか?
 それとも、単に個人名を冠した形で、この企画に携わってくれるライターが、一人も見つからなかったということなのか?
 いずれにしても、この江原の連載は、巻頭連載の勢いに水を差すだけではない。雑誌そのものの信用に泥を塗っている。
 溝口氏にも失礼だと思う。
 オレが溝口氏なら、間違いなく編集部に電話をしている。
「あのね。私の記事を巻頭に持ってきてくれたことには一応感謝しておきます。でもね、あの江原某とかいう人の連載は、あれはどういういきさつのものなんでしょうか? だって、あれ、編集部企画ですよね? 私の記事に対する当てつけなんですか? つまり、週刊現代はオカルトの味方です、と、そういう宣言みたいなものですか? ということは、私の記事は、編集方針に逆行する、営業上迷惑千万なデキものだ、と、そういうふうに受け止めてもかまわないわけですか?」
 ……あるいは、こういう、編集部にとって何一つプラスになるはずのない連載記事が掲載されるウラには、雑誌編集部の意向とは別の、もっとデカいところの思惑(たとえば、出せば十万部は見込める江原関連出版物の版権やら文庫化権をめぐる駆け引きとか条件とか口約束とか、あるいは、テレビ局とのメディアミックスのなんたらとか、代理店がらみのどうしたこうしたとか)があるのかもしれない。
 どっちにしても、来週からは買わないよ。永遠に。溝口さんには悪いけど。
 バイバイ。

|

« 霊魂と自尊心 | トップページ | 憑依 »

コメント

売れたもんがち、ツーか、面白くなければテレビじゃない@前世紀フジテレビみたいなもんじゃないすか。
一定の購買が見込める占い超常現象盲信派と懐疑派アンチ派両方に目配せして部数うpを狙う、みたいな。
私達は色んな見方を提供する場です、みなさんはどうお考えですか?つー世論の趨勢を考え、軸足をいつでも
チェンジできるように浮ついたフットワークを確保しておくスタンス、つーか。
亀田親子利権に群がる有象無象を揶揄したコラム(p65)を載せながら、記者の良心からか礼賛する表現は避け
関係者の発言の列挙にとどめるも、肯定的評価な記事(p62)も同じ号に載せた今週の「読売ウィークリー」編集方針つーか。
前のエントリー(霊魂と自尊心)でえいじ氏が書いていた日テレの亀田利権への目配せよろしく、結果的に視聴率確保、
部数うpのためなら何でもありじゃね?つーわかりやすいアウェイ&アウェイでノーボクシングスタイルで判定勝利狙いの
腰の据わらない浮ついて軽やかなステップ、って感じじゃないッスか?

投稿: 古今亭 | 2006/05/17 02:04

細木とか江原とか、コパとかの本って、
なんであんなにバカみたいに売れるんですかね。
どれもほとんど同じ内容で、
しかも本人が書いてないのに。

あっオカルト本だから、
ゴーストが書くのも当然なんですね。

投稿: スノーケラー | 2006/05/17 02:15

うええ江原ってこんなこと言ってるんですか。
一度オーラの泉とやらを妻と一緒に見たんですが、ゲストに向かって「あなたの前世は西洋のお姫様です」みたいなことのたまってましたね。(馬鹿)
相手の反応を窺いながら心のツボを押してやるのは上手で、まあ突っ込みながら見る分にはそれほど害はないし、うまいビジネスモデルを見つけたなこの人、という程度の感想しか抱かなかったのですが。まったく。油断も隙もないですな。

不愉快なのは、人間が霊魂になった(と仮定して)途端に、なぜか憑依するだとか未浄化だとか、江原の下司なレベルに合わせて貶められちゃって「単に不気味なモノ」に変換されていること。
セレブ(笑)向けには何だか知らないけど高貴な人物の魂を。一般人向けには不気味なモノを。商売上手にも程がある。
そんなインチキ(本人はもはや嘘をついているという意識すらないはず)やってるとそのうち憑依されちゃうよ。

あれ?

というか、こういう人物の罪を問うことってできないんでしょうかね?
まあそのうち尻尾を出すでしょう。と信じたい。

投稿: goo | 2006/05/17 02:17

>古今亭さん

いや、おっしゃる通り。
私とて、雑誌の編集部が一枚岩であるべきだとは思っていません。雑誌というのは、適当にダブルスタンダードで、そこそこにマッチポンプで、良いあんばいに羊頭狗肉で朝令暮改で、全体として柔軟であればそれで良いものだと、そう考えています。
 っていうか、むしろ、異分子の混入を許す度量の広さがあった方が、ページに活気が出るものなのかもしれません。
 ただ、あの江原連載は、誌面の統一感とか、編集部の見解の統一とか、そういう問題ではなくて、単体の記事として、あまりにもレベルが低すぎるということです。単発の埋め草記事ならならともかく。連載ですから。
 今週の誌面でも、細木の記事、戸塚VS義家対決、米長追及連載、後藤組関連記事と、なかなか硬派の良い記事が並んでいて、たとえば近頃の文春あたりと比べて、全体としてずっとレベルが高いのに、あの江原のインチキ連載があるおかげで、行間のオーラが濁っています。残念ですね。
 未浄化の編集者、あるいは悪いものに取り憑かれた社員がいるのかもしれません(笑)。
 残念です。

投稿: 小田嶋 | 2006/05/17 02:50

最近編集長が替わって始まった連載ですね。
せっかくの溝口氏の記事が、占い業界の勢力争いに利用されているように矮小化された受け止められ方をしかねない、残念な連載だなーと思います。

投稿: P尺 | 2006/05/17 14:02

戸塚、亀田、細木、江原と、ここのところ小田嶋さんの論説は素晴らしすぎます。こういうことを感じていたのは俺だけじゃなかったんだという強い安堵感を覚えました。

まっとうな意見には軋轢も多いと思います。いろいろと面倒なこともあるでしょうが、無理をせずがんばってください。

投稿: eddy | 2006/05/17 18:05

まあ週刊誌の編集者ですから
どっちも同じレベルの意識で作られてるんでしょうね
オカルトに対してきわめて不快な感情を自然に出せる人、抱く人、僕もそうですが、故ナンシー関さん、今だと宮崎哲哉さん、上岡竜太郎さんなどが有名ですが
そこらへんがいいかげんな人というのに、雑誌記事、書籍、テレビで出会うことがよくあります
この人たちはいったい何なんだろうかと、いつも思います
いったい何を信じて生きているのだろう
細木和子で視聴率がとれれば何の良心の呵責もなく
番組を放送できてしまう精神構造の異常さをどう考えればいいのでしょうね?
小田嶋さんはどっちですか?

投稿: けん | 2006/05/17 18:08

「金儲けは、頭でするんじゃない。心でするんだ」

投稿: 『細木数子を踏み潰すブログ』 | 2006/05/17 20:24

やっぱりこの人(江原氏)、人見て物言ってるんですね。
ストレスの多いサラリーマンを自殺ネタでくすぐるなんてなんとも狡猾というか、
もっと言うなら卑怯というか。

芸能人相手には美辞麗句を並べ立てて、
市井に暮らす無名の人には自殺者が憑依ですか。
だいたい芸能人って影ではものすごく
えげつないことをしているわけで、
そんな人が高貴な魂なわけがない。

それを高僧がついてるだの古代のお姫様がいるだの。
そんなこと楽屋でやっててくれよと思います。

投稿: タロスのパン | 2006/05/17 22:32

 社会には、オカルトを認めないという不文律で存立を支えられている部分があります。

 江原、細木両氏の番組は、その不文律を壊しかねない。

 放映するテレビ局の、神経を疑います。

投稿: よし | 2006/05/17 23:34

>ん? どういうことかって?
>わからないのか?
>糞食らえと、オレは言っている。
>いいか? 伝えたぞ。

当人が読んでいるかどうかもわからない(というかまず読んでいない)のに、
よくこんな書き方できるね。「いいか? 伝えたぞ」て。
読んでて恥ずかしいからいきがった文章はやめたほうがいいんじゃ?
まあ、大きなお世話だけどね。

投稿: tk | 2006/05/22 16:03

>tkさま

レトリックだよ。
日本語で言えば修辞法というやつだ。
おとなにいいがかりをつける時は、事前に勉強してからにしような。
いいか? 伝えたぞ。

投稿: 小田嶋 | 2006/05/22 17:24

足を引っ張ぱろうとするから泥沼になるんでしょうね。
それは、どこにでも発生しえるものです。

投稿: こっそり | 2006/05/23 01:16

>小田嶋様

それが修辞法だとして。
テクニックとして使用したのだとして。

相手に届かないところで一人で吠えている感じは、やっぱり読んでて感じてしまうわけで。
そのレトリックというやつを使ってどんな効果を出したかったのかわからないけど、
そう感じちゃうものは仕方がない。まあその時点であんまり効果が出てない気がするけど。

勉強してからでないと読むな、コメントするなって言うんだったら何にも言わないけど、
いちいちこれはこういうテクニックだな、なんて考えながら読まないよ。

投稿: tk | 2006/05/23 10:38

>tkさん

「相手に届かないところで一人で吠えている感じ」の、想定問答ふうなところが面白いんですよ。このくだりは(野暮な解説)。

投稿: よし | 2006/05/23 14:10

どっかの国で、占いの記号を国旗に掲げてるところがありましたな。どこでしたっけ<<<

投稿: メルヘンひじきごはん | 2006/05/23 14:21

みんな江原さんにオーラを見てもらった方がいいんじゃないのかな。
人類の手元にあるだけの科学という存在証明手段にはひっかからない物を全て「オカルト」という便利な語彙貧困性単語の中に一まとめにして超常現象を説明しきったと思い込んでいるあなた方、どれが程度として高くてどれが低いかって? それを決めているのは泥のように重く凝り固まっているあなたがたの思考であり、自分の思考外のものを受け入れるだけの余裕の無い偏狭な頭脳そのものでしょうが。
 そういえば、そんなあなたがたとよく似た思考回路の連中をどこかで見たことがあるなぁ・・。たしかガリレオ・ガリレイを処刑しようとした、当時の価値観の代弁者のような連中だったっけ。
何百年経とうと人類の中の愚かな者たちは一向に変わらないということだ。

投稿: ざぶた猫 | 2006/09/29 21:34

ざぶた猫語録 その1372
「人類が万能と信じて疑わない【科学】という名の手で掬い上げられ得るものは、自然界のほんの一握りの事実、しかも現象を説明するための映写物にすぎない。」

投稿: ざぶた猫 | 2006/09/29 21:56

おぉ。ここにも大たわけが一人。

大たわけが何を偉そうに「語録」か。さっさとうんこをもりもりしてぐっすり寝ることだ。偉そうにしたい病が癒えるぞ。

投稿: メルヘンひじきごはん | 2006/09/29 22:24

>ざぶた猫殿

【科学】は、万能じゃねーだろ。

っていうか、もしかして、【科学】は、万能だと思ってるの??

投稿: ゆう | 2007/04/21 02:12

自分は霊がいるとか居ないとか、霊感がどうのとかどっちでもいいのだが、3歳以下の小さな女の子が霊とかの概念もない次期に、見えているような発言をよくする。いつも決まった場所にお地蔵さんが出てくるらしい、気分良くその部屋でHも出来ない。
別の部屋にはお化けが居るというので、聞いてみたら、仁王さんということが判明、しかも、その子のお婆さんが良くお参りに行っているようで、どうもそこの、お地蔵さんと、仁王さんらしかった。
旅行に行けば、赤ちゃんの霊をつれて帰ってくるし、時には、そのお母さんらしき霊が来てたらしくアンパンマンの滑り台の中に居るといってたこともあった、どう考えても、嘘とは思えないんですよね。

投稿: 霊は居るのではないだろうか | 2008/04/03 19:26

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/52951/10106019

この記事へのトラックバック一覧です: オーラの泥沼:

» ワン・フレーズ [岩鬼アイランド]
偉愚庵亭憮録「オーラの泥沼」より.>以下に今週分の一部を抜粋する。>著作権? カネが欲しいんなら訴えろよ。受けて立つぞ。 ナイス捨てセリフ! [続きを読む]

受信: 2006/05/17 01:58

» ズバリ言います、歌舞伎役者な細木数子。 [プールサイドの人魚姫]
日本人は占いが大好きである。自分の将来がどうなるのか気になって仕方ないようだ。過ぎ去ったことはどうにもならないが、これからの人生をよりよくしたいと誰もが思っているだろう。殆どの人は細木数子を占い師だと思っているらしい。彼女は人生経験が人一倍豊富なおばさんに過ぎ... [続きを読む]

受信: 2006/05/17 18:01

« 霊魂と自尊心 | トップページ | 憑依 »