生体廃棄物処理の理論と実践
午前中テレビを見ていたら、テレ朝のワイドショーに戸塚校長が出ていた。
で、話題は、体罰の是非、徳育の必要性、戦後教育の荒廃とその原因ってなところを行ったり来たりしていた……のだが、あんまりばかばかしいんで、途中で電源を切った。だから、結論がどこに行った(あるいは消えた)のかは知らない。
テレビは戸塚先生に釣られているのだろうか。
それとも、視聴者を釣っているつもりなのだろうか?
もはや、誰も食いつかないと思うのだがね。あんなエサには。
だって、薄気味が悪いだけなんだから。
液晶画面の中でツバを飛ばしているあの人たちは、体罰の是非を問う以前に、戸塚という人間の正体を明らかにしてしまえばそれ以上の議論はムダだ、という、そこのところに、どうして気づかないのだろう。
体罰の是非については、様々な議論がある。軽々に一方的な結論を出せる問題ではない。
というよりも、このテの問題にかんして、「体罰否定」「体罰肯定」みたいな二者択一の論陣を張ること自体が、議論の前提として軽薄なのであって、人間と人間が生身でぶつかり合う場所である教育については、個々のケースを注意深く検討しないと結論は出せない。当たり前の話である。
それでも、「独善的な人間による一方的な体罰はよろしくない」ということだけは誰の目にもはっきりしている。とすれば、「戸塚の体罰はNG」という、この一点については、全世界的に明らかなわけです。
ついでに申せば、この問題(←戸塚氏による体罰が「暴力」と認定されたこと)は、既に裁判を通じて結論が出ている。それゆえ、こんな話題は時間を使うだけムダなのだ。
百歩譲って、体罰が有効であるような状況があるのだとしても、戸塚氏の体罰はその限りではない。なぜなら、戸塚校長は、暴力の行使する際に、決して自らを疑わないテの人間であるからだ。
つまり、ためらいを伴わない体罰は、これはすなわち感情的暴発ないしは暴力なわけで、逆説的な言い方をするなら、体罰の有効性を高らかに訴える人間は、体罰を行使する資格を欠いている、ということだ。
誤解を招きがちな表現だったかもしれない。
別の言い方もしておこう。
つまり、ある人間が別の人間に対して肉体的な強制力を行使するに際しては、前提として、強制力を行使する側の人間に、圧倒的な「徳性」が備わっていなければならない、と、そういうことです。
で、戸塚先生にはその「徳」が無い、と。
戸塚氏が言っている「徳育」の問題についても同様だ。
徳育という考え方(ないしは、教育技術)が有効であるか無効であるのかについては、体罰の是非と同様、安易な結論は出せない。
が、「戸塚の徳育は無効だ」ということは、断言しておかねばならない。
なんとなれば、徳の無い人間による徳育は、板前による外科手術と選ぶところのない暴挙だからだ。
……って、ムダかな。何を言っても。
黙ろう。
あのテの「廃棄児童再生業者」みたいな人間は、相手にした時点で負けだ。
再生業者?
いや、再生なんかしていない。戸塚先生は「子捨て」という需要を商売にしている一種の処理業者であるに過ぎない。ま、教育廃棄物処理業者ってやつだ。
結局、自分の子供が邪魔で、それを放擲したいと願っている親が一定数存在している以上、その需要を満たす業者が現れるのは当然の帰結であるわけで、遺棄子弟を有料で引き取って、社会的なパルプ滓みたいなものに仕立てあげる機関である戸塚ヨットスクールは、どんなに非難されようとも、不滅なのだな。
どんな家にも便所が必要であるのと同じ理屈で、自分のケツを拭けない親がいる社会では、戸塚ヨットスクールの商売は安泰、と。
だからこそ、こういう人間はテレビに出してはいけない。
99%の人間に嫌われても、戸塚は全然痛くも痒くもない。
だって、残りの1%の、子供を捨てたいと願っている親たちに対してプロモーションができれば、商売としては大成功なわけだから。
寝よう。
いや、その前に原稿、と(笑)。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
要するに、彼は“ハートマン軍曹”なんではないかと(ただヒスっているのではなく“効果”は理解している)太平洋を一人乗りヨットで渡ってしまうようなヤシに、身の回りことすらロクにできないヒッキーの矯正をさせること自体が、そもそもムチャなんで。‘90年代くらいまであった大アマな“子供観”へのカウンター的存在としては意味があったろうけど、実際の“教育者”としての資質には疑問があります。
投稿: truly_false | 2006/05/03 12:57
「戦争の是非」は、それこそ、是々非々に判断していくしかないのですが、北朝鮮の先制攻撃は絶対的にNGと、こんな風に理解すればいいのでしょうか?
投稿: Inoue | 2006/05/03 12:59
不登校児の親として戸塚ヨットスクールに入れたくなる気持ち、わからないではありません。カウンセリングで「好きなことをやらせてあげてください」と言われ、見守っているとマンガとテレビ三昧。塾も家庭教師も拒否。このままこの子はだめになっちゃうのかとあせっちゃうんですよね。とりあえず、「効果」が欲しい。芽吹くのを待つ余裕がなくなる。そんなとき「絶対に治してみせる」と言われたら…。死者行方不明者続出の施設に入れる気も、そのお金もないですが。それにしてもこういう施設の後援会長が都の教育をリードしてるって、すごいなあ。
投稿: tanu | 2006/05/04 00:39
怒れよ、バカ。ビンタぐらいしろ、アホ。
投稿: --- | 2006/05/04 06:59
>感情的暴発ないしは暴力なわけで
これは違うでしょ
彼は暴力が必要だという教育理論=治療理論によって
暴力を使ってるわけで感情の爆発では全くない
ある種の精神の病にかかってる子供に対する
治療という意識があるわけで
もしかしたら有効かもしれないんで
間違ってるという理論があれば教えてください
投稿: けん | 2006/05/04 10:57
ルックスと言い方で損してますよね。>戸塚氏
あれで「夜回り先生」みたいな外見と喋りだったら...。
投稿: pike | 2006/05/04 12:51
>間違ってるという理論があれば教えてください
それは話が逆で、「有効」ということを、戸塚が自分で研究して発表すべきでしょう。どうして第三者が彼のために研究なんかしなくちゃならないのですか。
人間相手の研究で、理論だけで有効性を議論することは不可能です。理論が間違っていても有効な治療法は存在します。
ちなみに、戸塚の脳理論は現在の医学知識とは全く一致しません。つまり、理論は間違っている。有効か無効かはわからない。
戸塚がやっていることは代替医療と同じです。「無効である証拠」はないが、「有効だという証拠」もない。そうである以上、戸塚の行為を、単なる暴行や傷害致死として処理する以外に、どういう処遇があるんでしょうか?
#精神病患者に電気ショックを与える治療法は、それが効く理由はわからないが、有効性は立証されています。よって、精神科医による電気ショックは暴行ではないのです。
投稿: Inoue | 2006/05/04 12:54
>単なる暴行や傷害致死として処理する以外に、どういう処遇があるんでしょうか?
過失致死とか。ちなみに戸塚氏によれば、取調べにおいて、捜査員(検察官だったか?)に“故意”(つまり“殺人”だったこと)を認めるよう強迫されたとのこと(むろん否認)
投稿: truly_false | 2006/05/04 15:05
彼の教育理論は本で書かれてるよね?
父権を欠いた家庭で育った子供たちの前で
自分が父となり
暴力を使ってでも立ちふさがることで
精神の病が治るという理論でしょ
投稿: けん | 2006/05/04 18:21
戸塚の「教育理論」とは彼の単なる主張、主義、思想とでも言うべきもので、検証できないし、反証可能性もない。少なくとも科学でいうところの「理論」ではない。
しかも、体験論的に「登校拒否が治った」と言うわけですが、放っておいても治ることは多いわけで、「刺抜き地蔵」とどこが違うんでしょうか。
有効と無効の定義をはっきりさせて、実験群と対照群と比較しない限りは、有効性についても何も言えない。
投稿: Inoue | 2006/05/04 19:24
検証されてる教育理論なんて
ないに等しいんだから
ある種
経験主義に訴えなければいけないこともあるし
教育なんてほとんどがそいうものだよ
投稿: けん | 2006/05/04 19:32
まあ子供が拉致されて少年兵にされたり、飢え死にしていくような世界から見れば、アホ見たいな議論ですわな。ボツワナ(意味不明)。
投稿: 694 | 2006/05/04 20:02
小田嶋さんが完全に否定しているのは体罰ではなく、戸塚先生とその教育方法だけ。
え?更正した生徒もいる?
ご冗談にしてはちとキツイ。
たまには生徒が死亡したり行方不明になってしょうがない??
投稿: YOSHI | 2006/05/04 20:19
>検証されてる教育理論なんてないに等しいんだから
それはあなたが教育理論を知らないんですよ。佐藤学や天野郁夫や苅谷剛でも読んでみては?
投稿: Inoue | 2006/05/04 20:28
とりあえず、小田嶋さんのコメント待ち。
投稿: abc | 2006/05/04 22:56
inoueさんの言うように正当行為に該当し得ない以上は、「暴行」「傷害」「傷害致死」ってことになるのが当然ですよね。
「殺人」もありえたと個人的には思いますが…。
過失致死って…そりゃありえないよ。言葉のイメージで適当に言ってない?
投稿: 凡人 | 2006/05/05 00:17
長くなりそうなので、新しいエントリーを立てることにします。
投稿: 小田嶋 | 2006/05/05 04:12
けんさんは戸塚の「脳幹論」を読んでないみたいですね。彼の理論はこういう構造。
「ヨット訓練が情緒障害(ってなんだ?)に有効」(体験的事実)
「情緒障害児は生物的機能をつかさどる脳幹が弱っている。だから身体を動かして脳幹を鍛えれば治る」(理論的根拠)
ところが、前者は専門家によるケーススタディも統計的検定もされていないし、後者は現代脳科学と照らし合わせるとトンデモとしか言えない。
拘置所や刑務所の中で、工学部卒のオヤジが筋トレしながら考え出した脳幹論なんてものが、実物の脳で実験している脳科学者より優れた理論のはずがないでしょう。
投稿: Inoue | 2006/05/05 10:17
よく読んでいますね
僕は全く読まずに書いているのでなんですが
ただその脳研究もどこまで妥当か怪しいですけどね
僕も暴力は嫌いで、学校時代の教師の理不尽な
暴力を憶えていて当然無能な教師の「感情の爆発」に
過ぎないものでした
戸塚のことは何も知らないのですが、不思議に彼には
不快感を感じなかったので、小田嶋さんが「感情を
爆発させて」戸塚をあまりにも否定的に書いていたので違和感があったというだけのことです
もちろん暴力をふるっているわけですから、訴えられたらいいわけはできないのですが、彼を憎むことは
できませんでした
投稿: けん | 2006/05/05 21:36
>死者行方不明者続出の施設
そうなんですか?
どのくらいの期間で何人中何件発生したんですか?
投稿: のの | 2006/05/05 23:59
最初の人のいってるのが、一番まっとうだと思う。
体罰を行うのはタイミングと、児童生徒に徳があると思われ、信頼されている人間だけが、コソコソと行うことができる指導法。
あんなに堂々といえるもんじゃない。
投稿: aslan | 2006/05/08 09:52