妖精
ヒンギスは負けたようだ。でも、立派だったと思う。復帰二戦目で準優勝。上出来だ。
パワーテニス全盛の時代に、あのフィジカルでランキング一位を維持していることだけでもたいしたものだと思っていたが、この度の復活はマジで見事だった。
「パワーテニス全盛」と言うと、競技の高度化みたいに聞こえる。
でも、実態はラケットの機能進化に過ぎないのではなかろうか。でなくても、観客席から見る限り、この20年のテニス界の変化は、テニスがテニスでなくなっていく過程そのものに見えた。だって、ラリーが消滅したわけだから。
男子テニスは、ボリス・ベッカーが登場した頃から、徐々にスピードガンコンテストみたいな競技に変質しはじめ、現在は来るところまで来ている。おそらく現時点で、一試合に占めるサービスエース占有率は、ボルグ/コナーズ/マッケンローの時代に比べて、10倍に到達しているんではなかろうか。
ノータッチエース合戦。サービスゲームキープ率90パーセント以上。で、お約束のようなタイブレーク。不毛。
女子テニスのゲームは、男子の試合ほどサイコロバクチ化していないが、それでも、徐々にサーブのスピードのみを競う単調な腕力勝負に傾いてきている。
そんな中で、非力な技巧派のヒンギスが、3年のブランクから復帰したわけなのだから、これは快挙と言わねばならない。
ただ、このまま彼女がすんなりと復帰するかどうかはちょっと疑問だ。
パンツのケツの部分に広告を入れた(←あれはクリティカルヒットだった)頃から、ヒンギスは微妙にひねくれていた。引退は、体調よりもモチベーションの問題だったのだと思う。
で、短期的なモチベーションは回復したのかもしれないが、もう一度ツアープロの日常を受け入れることができるのかどうかはまだわからない。オレだったらヤだな。よっぽどカネに不自由してるんでもなければ。だって、テニスのワールドツアーって、やたらに苛酷そうだし。
シャラポワは昨年同時期と比べて身長が5cm伸びて、188cmになったんだそうだ。
いまのところ、テレビメディアは「妖精」という接頭辞を引っ込めていないが、気のせいか、ちょっとだけ使用頻度が減ったような気がする。
レポーターの兄ちゃんも自分よりアタマひとつ大きい女に向かって「妖精シャラポア」と言ったあとに、さすがに気まずい表情をうかべていたりする。
来年の今頃、どうなっているのかちょっと楽しみ。
190cmを超えた相手に向けて、なお彼らは「妖精」と呼びかけ続けるのだろうか。
ピーターパンよりアタマひとつデカいティンカーベルがものすごい羽音を立てながらぶんぶん飛び回るファンタジー。
素敵かもしれない。
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コメント
「サーブ1本だけにしよう」って話が出たことがあると思いますが、ダメなんですかねぇ。
投稿: のぶ | 2006/02/05 20:36
たしかにノータッチエース合戦は見てて単調でつまんないですね。ロディック対ナルバンディアンとか見る気になれない…。
でもフェデラーとかヒューイットはラリーで勝負するタイプだと思うので、サンプラスが頂点に立っていた時代よりはまだましかな、と。
でもサンプラスの美しいまでのサーブ&ボレーを再び見たい気もするんですけどね。
投稿: shun | 2006/02/05 22:46
「スポーツ選手につけるニックネーム」つながりで。
田村亮子”YAWARAちゃん”は、一時のプロモーションの手段としては有効でしたが、他に形容句が見つからないボキャ貧スポーツライターがずるずると使い続けたため、YAWARAちゃんという言葉を聞くたびに、私は耳をふさぎたくなります。こんなサイトまでできてます。気持ちはわかる。
http://homepage.mac.com/hidkazoo/tawara/
田村の試合成績は立派だし、浦沢直樹の漫画も嫌いではない。しかし、両者をつなぎ合わせるのは、絶対に無理がある。猪熊柔と田村亮子は、まったく似ていない。共通点は「女の子で柔道が強い」だけです。
投稿: Inoue | 2006/02/06 12:49