耳の純潔
音楽ファンの偏狭さについて、いくつか言及があった。
で、ずっと昔「クロスビート」という雑誌に連載を持っていた頃に、「耳の純潔」という主題で原稿を書いたことを思い出した。
いま、テキストが手元に残っていない(古い原稿ファイルを大量保管していたCD-ROMが、ある日読めなくなってました。市ねマクセル)ので、3割ぐらいしか覚えていないが、おおまかな内容は以下の通り。
- 耳は目に比べて指向性が曖昧な器官だ。
- 目は複数の対象を同時に見ることができるが、耳は同時に二つの音楽を聴くことができない。
- 目にはまぶたがあるが、耳には耳ぶたがない。それゆえ、耳は、自らの意思で自らを閉じることができない。
- 耳たぶならあるけど、あれはホットケーキを焼く時以外にはあんまり役に立たない。
- 以上の理由から、「耳は騒音やクズ音楽に対してまったく無防備だ」という結論が導かれる。うわあ。
- 不快な景色に対して、目は、そらしたり、そむけたり、閉じたりすることができる。
- 対して、耳はどうしようもない。360度の不快音源に対して、ほとんどまるで無抵抗。両手で耳をふさぐことはできるが、そうすると精神がダルマ状態になる。お手上げ。
- で、腐った音楽にさらされ続けた耳は、ブタ耳になる。
- ブタ耳は、ブタであるのだからして、当然、繰り返し聞こえる音に飼い慣らされる宿命のうちにある。
- でもって、耳タコ音楽に聴覚(と美意識)をレイプされた無自覚な聴衆は、いつしかその音楽を愛するようになる。
- 結論:耳の純潔をないがしろにするヤツのリスナー生命は風前のともしびだぞ。
- ついでに言えば、耳は排他的な器官だ。
- どういうことなのかというと、あるジャンルの音楽を聴き続けていると、他のジャンルの音楽に対して忌避感を抱くようになるってことだ。
- 逆に言えば、ロックファンであり続けるためには、他の音楽に対して、思い切り排他的かつ偏狭なスタンスで構えなければならないということになる。
- CMソングをうっかり口ずさんでいたりするタイプの人間は特に要注意。屁ジャズを流しているラーメン屋だとか民謡をループさせてる民芸居酒屋への出入りは極力回避しよう。じゃないと、長渕剛で涙流すようになるぞ。
まあ、半分は冗談だ。でも、マニアが外道の音楽(←自分が普段聴いているジャンル以外の音楽)に対して、寛大になれない理由の一半は明らかになっていると思う。
結局、耳というのは、ありゃ根っからのファシストなのだな。どんなに思想がリベラルであっても。
ん? だからどうしたって?
だからさ。これ以上、外道とは議論しないぞ、と、そういうことだよ(笑)。
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コメント
じゃ じゃあ しません!ぷんぷん!
ひとりごとします!
どうにも歌謡曲を聴き続けるのが苦痛になってた、…
17年前、ですか…美里さんの歌が、なんでこんな休み
休み息継ぎしながら歌うんだろう、と思ってました…ま、
感じてた、でもいいんですが、もう…サザンの歌の、お
飾りで使う英語にも、
ガリ勉を二浪目でやっとし始めて、その後背骨が曲が
るのも知らず身体斜めにして机にしがみついていた
ある日、流れてきた歌が、ぐっばいあわぱすてるず’ばっぢ…こりゃ、せいらーふくをぬがさryよりも、ずがん
と来まして、はい
これを追っかけてたら、知らない家に、いろんなとこに
手を出す香具師になりました…はっきりゆって、ヲタとしか
ゆいかたが無い筈だったんですが…
ifもしも…のマルコムマグダウェルがこーねりやすに
そっくりやん!くらいのことがゆえる身体になってし
まったという…ま さ に パワフルだぜ!女の子も
ほっとかないぞ!…ってわけでも、なかった?かな?
ま、オリーヴな乙女もなびいたりして、生き方めた
おかしくなっていきましたな…(少し、嘘があります
あの時より凄い風が吹いたことは、ないですね
今のところ
如果 が、次いでなんです そん次が せいらーふく
三つは多いかな…歌は世に釣れ世はryってことで
寝ます 長いひとりごともうしわげながんす
投稿: メルヘンひじきごはん | 2006/02/07 02:06
「誰でもいいぜー ぶっこんでやる」
http://www.skydogsite.co.jp/rocks/gedo.html
投稿: nervenarzt | 2006/02/07 10:33
確か、「安全太郎の夜」に収録してると思います。
投稿: koz | 2006/02/07 11:40
CDやDVDは商用でもしっかり使われている太陽誘電製をおすすめします。
投稿: kokona | 2006/02/07 11:46
この亭にしてはお若い(推定)お客様で、それなりに楽しめましたけどね。でも次回はお題目が何であれ、もう少し日本語が読める/書ける子がいいかなぁ、と。
投稿: かず | 2006/02/07 19:46
今日こちらのHIPHOP関連の記事にふれた記事を書きましたので、「反抗と慰安」のところにTBさせていただきました。
投稿: kobanto | 2006/02/07 23:18
私事ですが、本日、人間ドッグに行って来まして、待合室の読売ウィークリーの中の小田島さんのエッセイを読んで帰宅後すぐに検索しここにもぐりこんで参りました。
わたくしは、「何でも聞いてやろうという」いやらしい気持の持ち主でありますから、当然HIPHOPも聞いております。 13年前まではHIPHOPやレゲーなどは、田舎もんの聞く音楽と思っておりましたが、友人にパンピーには、この良さはわからねーと言われてから意地になって聞きまくりました。 その結果、結構いい曲もあったりしました。
基本的にはHIPHOPは、ラップとトラックとの構成で成り立っており、このトラック(ネタ)は、過去のソールやジャズなんですが、(ロックもある)トラックの使い方にセンスが出たりして音楽的価値は結構あると思います。
しかしながら、歌詞の方は確かに馬鹿らしいというかおこちゃまのケンカ的要素が強い物が多いのは事実です。
はっきり言ってどうでもいいんだけど!!
小田島さんに興味を持ったので書いてみました。
本 買って 読んでみます。
これからも 断定的な意見 期待してますよ!
投稿: beanball | 2006/02/08 17:15
とんねるずの「歌謡曲」をさっき聴いて、二回大爆笑しましたwwwwww
いや、秋元さんはこけてもこけても時々いい仕事で立ち直るだけ…いやいや、とりあえずとにもかくにも、先を読んでいたのかいなかったのか、ただの肥満体メガネでは、ないんですな
いや、マジ今聴くと大爆笑ですよw上の俺のカキコのキモいことといったらwwwwww
投稿: ひじきごはん | 2006/02/22 22:09