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木曜日, 2月 09, 2006

コラムニスト宣言

 忙しい。
 毎月のことだが、ほとんどすべての仕事が最初の一週間に集中している。今日一日がんばったら、2~3日ぼんやりして、それから先のことを考えることにしよう。

 ところで、朝日新聞がやっている「ジャーナリスト宣言。」キャンペーンって、ちょっと変だよね。
朝日新聞のご案内ページ
「言葉は感情的で、残酷で、ときに無力だ。それでも私たちは信じている、言葉のチカラを。ジャーナリスト宣言。朝日新聞」

 あれのCMをテレビで見ると、微妙にはずかしい気持ちになる。
 なぜなんだろう?
 おそらく、朝日新聞社自身が、自分たちの「言葉のチカラ」を信じていないように見えるところがイタイのだと思う。
 なにより、「言葉のチカラ」と、「力」をカタカナ表記にしているところがよろしくない。コピーライターの心のふるえが露呈している、というのか、斜に構えている感じがするわけだ。
「それでも私たちは信じている、言葉の力を」
 と言い切ってしまってから、自分のセリフに照れている感じ、ですね。
 倒置表現まで使って大見得を切った以上、照れるのはルール違反だと思う。ここは一番、思いっきりクサく、ベタに、ポエム全開で信じ切ってやるのが相手に対する礼儀だと思う。
 こういう場面でのカタカナ使用は、
「えっとつまり、オレとしては、キミをアイシテるわけです(笑)」
 ぐらいなメールを想起させる。
 微妙に腰がひけていて、口説いた相手に笑われた時に
「なーんてね。冗談冗談」
 と、安全に撤退する退路をあらかじめ確保している感じがするわけだ。
 
 表記の問題だけじゃない。
 内容もちょっとおかしい。
「感情的で、残酷で、ときに無力」 なものを、簡単に信じて良いのか?
 という問題が残る。
 「それでも、信じる」ことを誰かに訴えるためには、その、信じようとする対象の良いところをきちんと列挙して、「こういう欠点があるのは承知しているけれども、一方、それにはこれこれこういった長所やこんなふうに素晴らしいところがあって、だからこそ私はそれを信じるのだよ」
 というふうに、丁寧に相手を説得しないといけない。
 「残酷だけど信じる」とか、「感情的だけど信じる」と、留保抜きの信頼感をただまっすぐに強調されても、聞かされる側は困惑するばかりだ。というよりも、
「それって、盲信じゃないのか?」
 という疑問が生じますね。当然ですが。

 「言葉」を誰かの名前に置き換えてみるとわかりやすくなるかもしれない。
「英寿さんは感情的で、残酷で、ときに無力です。それでも私は信じています、英寿さんのチカラを。駆け落ち宣言。みゆき」
 これ、マズいよね(笑)。
 明らかに悪い男にひっかかってる感じしませんか? 
 とにかく、パパは反対だな。なるべくなら結婚は許したくない。ちょっと前の世代のオヤジなら、パァーンてなぐあいに娘のほっぺたをひっぱだいて、言うだろうね
「目をさませバカモノ」
 と。
 
 男の例だけだと、なんだかマッチョみたいで良くないんで、逆の例も出しておく。
「りえは感情的で、残酷で、ときに無力だ。それでもオレは信じている。りえのチカラを。交際宣言。健一」
 うん。悪いのにひっかかってる(笑)。まあ、通過儀礼だけどさ。ジャーナリストがひっかかちゃいけないよな、こんな性悪に(笑)。
 マジレスをすると、言葉を信じることより、言葉のうさんくささを自覚して、常に自らをいましめることが、ジャーナリストたる者が持つべき心構えの第一条だと思う。
 言葉のチカラを安易に信じるジャーナリストは、包丁の切れ味に疑いを持たない板前と同じで、ダメな職人です。てか、素人。
 いつでも包丁のサビを気にかけて、メンテナンスを怠らず、間違っても生身の人間に向けて使わないように気を配るのが、まっとうな職人ってものだよ。

 というわけで、コラムニスト宣言。
「オレは感情的で、残酷で、ときに無力だ。それでもオレは原稿料がほしい。コラムニスト宣言。小田嶋隆」

 そう。言葉の残酷さを、言葉のせいにしてはいけない。
 オレの言葉が残酷なのは、オレの不徳。
 オレの包丁が他人を傷つけたら、それは100パーセントオレの責任。
 ま、包丁のチカラなんかを信じてどうするってことだよ。信じるべきは、オノレの目と頭とウデ。あとはハラを切る覚悟。それだけだろ?
 

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コメント

しかも、そのTVCMが、早朝の配達所から、配達員が出発するシーンで最後を〆てるあたりも、いまひとつ分かりません。

投稿: truly_false | 木曜日, 2月 09, 2006 17:05

>truly_falseさん
 同感です。
 結局、あのCMの狙いは、新聞を配達している人々に向けての慰安なのかもしれませんね。
 視聴者(&読者)にアピールしてる感じもしないし、リアルな記者は、赤面汗顔なんでしょうから。
「ウチの上の方のセンスって、これだからなあ……」
 と。
 まあ、あれで盛り上がってるようじゃ困るけど(笑)。

投稿: 小田嶋 | 木曜日, 2月 09, 2006 20:33

 あ、でも私的には、これまでの朝日の、あまりにもダザダサなテレビCMと比較した場合、結構スマッシュヒットな印象を持つですよ。

 だってほら、これまで放映されていた朝日のテレビCMって……、あれ? 思い出せないぞ(~_~;)。というくらい印象薄い、どこか地方の代理店に、とりあえずアットホームでね、別に産経みたいに受け取らなくて良いから……、という趣旨で依頼したよな奴ばかりだったでしょう。
 それに比べれば、いえ確かに私も、あのCMを初めて見た瞬間には、「どっちらけ……」と突っ込み入れてしまいましたけれど、話題になってなんぼのCM路線としては成功と言えるのではないかと。

投稿: えいじ | 木曜日, 2月 09, 2006 20:39

>えいじさん
 なるほど。そういう見方もありましたか。
 私の場合は逆で、新聞社のダサいCMには寛大なのですよ。「おふろでキュキュキュ」(あ、これ、東京新聞でしたね)だとか。かわいいじゃないですか。
 その点、「宣言……」は、ナマジにカッコイイからハラが立つワケです。なーにカッコつけてるんだ、と。
 チクシor本多世代のジャーナリストのナルシシズムが透けて見える感じがしませんか?
 オレたちが大衆を啓蒙するんだ……みたいな。
 って、深読みしすぎですかね(笑)。

投稿: 小田嶋 | 木曜日, 2月 09, 2006 20:57

 幼い頃に見たCMでおぼろげな記憶しかないのですが、産経新聞のCMはすごかったですね。
 1年間取ると、こんなにお得という意味で、卵を何百個も並べてみたりとか。
 新聞は紙面よりも景品をえさに拡販しているようなものだから、CMもそれに合わせて悪いというわけじゃないですが、あれだけあからさまに「ウチの取り柄は安いことです!」と打ち出すCMって・・・

投稿: Inoue | 木曜日, 2月 09, 2006 22:57

腹なんか切らないで、汚いから。後を片付ける人のことも考えましょう!家では誰かが偉そうな事を言った時に「○○(苗字です)朝日新聞君!」と呼ばれます。自分だけが正しいと思っている人に何を言っても無駄なような気がしますが、言わないとこっちが参るのも事実です。自分が何をしたかということはしっかり覚えていたいと思います。自分の口から出た言葉もまた自分なのだと思って、あまり酔っ払わないで生きていたいと思っています。

投稿: たんこ、ぶー | 金曜日, 2月 10, 2006 00:26

私は今さら「ジャーナリスト」を宣言されても……って感じでした。

あと、駅張りのポスターで見るとなんだかなぁって感じなんですが
TVCMの方は、確かにかっこいい。
湾岸戦争の花火のような爆撃、油まみれの海鳥……
映像のチカラを再確認させられます

投稿: スノーケラー | 金曜日, 2月 10, 2006 01:44

>ナマジにカッコイイからハラが立つ

朝日のこのCMは、アップルのThink differentのときのCMと似ている。
心に期すところががあるんだろうって、ちょっと期待してしまう。

でも、朝日新聞社がこの期待に見合うほどの変化をしたいわけでもなさそうなので、結局、カッコイイことだけ言いっぱなし、ということになるんでしょう。

ハラが立つの同感です。

投稿: よし | 金曜日, 2月 10, 2006 01:47

構わないのでしょうか、書き込んで

うまく、誤解させる。それが、言葉を使って貰う「かたがた?」のやりくち、みたいです

「諦める」を、「あきらかにする」>「やめる」
「信じる」を、「のべる」>「うたがわない」
「フェミニスト」を、「女性主義者」>「女の肩を持つ男」

洗い直して、元のいいたいことがそこそこつかめていれば、ミスリーディングは避けられると思われます

チカラ、を「近ら」と書いたとして、なんじゃこらy、と思われても仕方ありませんから。それほど、朝日がずるすぎる、とまでは思いません。ずるいけど。すぎは。

投稿: メルヘンひじきごはん | 金曜日, 2月 10, 2006 06:13

朝日のコマーシャルがはじまったときから、以下のように呟いていました。

「ジャーナリストの使う言葉は感情的で、残酷で、ときに無力だ。それで私たちはいつも片方の眉にツバをつけて読んでいる、朝日新聞を。読者宣言」

投稿: sengawa | 金曜日, 2月 10, 2006 09:00

>スノーケラーさん
私はあのCMを初めて観て、
「じゃあお前ら今まで『ジャーナリスト』じゃなかったのか?
自分たちを何者だと思ってたんだ??」
…と思わずツッコミを入れてしまいました。
小田嶋さんが言うように、
「チクシor本多世代のジャーナリストのナルシシズム」臭がぷんぷん匂うクセに、
広告上では、事実上
「今まではジャーナリストじゃありませんでした宣言」をしてしまってる。
二重の意味でねじくれた変な広告と感じました。
テレビCMの方は音を消して観せた方がまだマシなんじゃ?

投稿: 天荒雄酒造蔵主 | 日曜日, 2月 12, 2006 22:11

旅をするんじゃないですか、これからは

ジャーニー ジャーナル ジャーナリスト

せんちめんたる、

投稿: メルヘンひじきごはん | 月曜日, 2月 13, 2006 06:14

件のTVCFで登場する油まみれの海鳥の映像って
イラクが重油を海に垂れ流したせいで油まみれになった海鳥、ってことで流されたけど、実はそれはウソで(多国籍軍が破壊した施設から流れ出た重油?)、アメリカ側の戦争キャンペーンを無批判に垂れ流したマスコミの象徴、という曰く付きじゃなかったでしたっけ。
あの映像が挿入されているのを見て、「このCMキャンペーンは実は壮大な自虐ネタなのではないか」と自分を納得させてます。
でないと痛くて。

>結局、あのCMの狙いは、新聞を配達している人々に向けての慰安なのかもしれませんね。
そう考えるとすごく理解できます。なるほど。

投稿: けい | 火曜日, 2月 14, 2006 00:50

惚れたぜ

投稿: き | 火曜日, 2月 14, 2006 03:14

私があのCMに感じた違和感は,スノーケラーさんのコメントに「映像のチカラを再確認させられます」とあるように,言葉のチカラをうたっていながら,映像のチカラを使っているところにあります.

投稿: Nahoko | 火曜日, 3月 07, 2006 00:15

>言葉のチカラをうたっていながら,映像のチカラを使っているところにあります.

おお、そうだそうだ。そういやその通りだ。

投稿: nervenarzt | 火曜日, 3月 07, 2006 16:50

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