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2006/01/26

ザ・フール・オン・ザ・ヒル

 春からいくつか仕事が減る。
 落胆。
 いや、仕事が減るのはかまわないのだが、収入が減るのが憂鬱だぜ、と、そういうことです。
 貧乏は、体力のある若者が引き受けるべきものだと思う。
 オレはもういやだ。

 コラムという仕事の割の悪さと、需要の低さを思うにつけ、いっそ、小説でもでっちあげてやろうかと思う。
 まあ、そんな簡単なものでもないんだろうが。
 ちくしょう。
 というわけで、このblogを見た商業誌の編集者の皆さん。文字でできる仕事は何でもやりますので、心あたりがあったらご連絡をよろしく。

※ホリエモン逮捕
 この一週間、テレビ報道はホリエモン一色。袋だたきの様相。まあ、これまで、さんざんメディアを利用してきた行きがかりからして、一転、ネタの側にまわった場合に、骨の髄までしゃぶられることになるのは、仕方のないなりゆきではあるのだろう。
 でも、このたびの堀江容疑者をめぐる事件を受けて、コメンテーター各位が、異口同音に
「額に汗して働くことの大切さ」
 みたいな言説を吐いている現状は、どうにも欺瞞的だと思う。
 堀江容疑者の身になって考えるなら、少なくとも、商業電波解説者に、きいたふうな説教をカマされる筋合いはない、と、そう思うはずだ。
 キミたちがこなしている、そのコメント供給商売は、一滴でも額に汗が流れる仕事なのか?
 違うだろ?
 何のリスクもない片手間仕事で、知名度と業界コネにあぐらをかいた、言い逃げのアドリブ稼業じゃないか。
 引き比べて、堀江メンバーがたずさわっていたマネーゲームの世界は、額といわず脇の下といわず、体表面の汗腺細胞のすべてからイヤな汗の噴き出すテの、血の池の上の綱渡りにも似た消耗戦だ。
 その暗闘に、堀江は敗れた。のみならず、人の道を踏み外してもいた。だから今、堀江は寒い場所にいる。
 でも、あの小太りの小生意気な小利口者が額に汗していなかったと言う権利は、少なくとも、あんたたちには無いぞ。

 逮捕を受けて、各局が採用したプロットは、「ヒルズ族の転落」という物語だった。で、内容は、唖然とするするほどそっくりだった。
 イマジネーションの欠如――というよりも、ホリエモンの拝金主義を批判しているつもりでいる彼ら自身が、六本木ヒルズへの賛嘆に満ちたレポートを通じて自らの拝金主義を露呈していたわけで、いずれにしても、ひどい見世物だった。
 
 小菅の拘置所について、「報道ステーション」は、当初、「暖房はありません」「中の温度は、外気とほとんど同じだと思います」みたいなレポートを流していた。
 違うよ、フルダチくん。
 暖房が無いというのは、部屋のいちいちにストーブやらが無いということで、ああいうデカい建物は集中暖房になっている、とそれだけの話だ。
 もちろん、各房に暖房の吹き出し口がないわけだから、かなり寒いには違いない。それでも、氷点下だなんてことはあり得ない。
 ムネオも言っていたが、寒さは、実はたいしてコタえなかったそうだ。
 問題は閉塞感。
「精神の平衡を保つのが大変だ」
 と、ムネオは言っていた。なるほど。
 ムネオみたいな、ああいうメンタリティーの人間(←厚顔無恥)をして、閉塞感を感じせしめるというのは、これはけっこう大変な仕事だ。
 拘置所に入れられている人間が、容疑者である(←受刑者ではない)ことを考えれば、日本の拘置所というのは、あれは、人権的にはヤバい場所であるのだろう。

 話を元に戻す。
 報道ステーションをはじめとする朝晩のニュースショーは、「45畳の居間から、3畳の独居房へ」という言い方を、しきりに強調していた。つまり、「居間だけでも45畳という優雅な暮らしから、3畳の独居房に……」
 というふうに、転落劇をより落差のある形で印象づけたかったわけだ。
 率直に
「ざまあみろ」
 と言えば良かったのに。

 ところで、「ヒルズ」
 という言葉の連呼に、ついビートルズの、ザ・フール・オン・ザ・ヒルを思い出した。
 ので、以下、歌詞を掲載します。
 今回は、文語で訳してみました。
 擬古文にはあんまり自信がないので、お気づきの点があったら、お知らせください。
 なお、掲載の許可については、現在検討中です。
 ポール・マッカートニーはともかく、もう一方の著作権者であるジョン・レノンはすでに故人だし、ビートルズの歌の版権を所有している(少なくとも5年前にはそう言われていた)マイケル・ジャクソンにも話を通さねばならないからだ。とすると、これは、電話一本では済みそうにない。
 できれば、近いうちに、4人で座談会を開催したいと思っている。東芝EMIが部屋を貸してくれると良いんだが。

原詩(英文)のリンク先@The Fool On The Hill

    丘上の愚者

日毎 小高き丘に独り
蒙昧の笑み浮かべる男
粛々として不動たり
世人は彼を識らず
その暗愚なるを知るのみ
彼の男 黙して答えず

丘上の愚者
悠揚として落日を眺む
頭上なる双眸は
四海の廻転を静観して久し

営々と 雲の裡なる頭(こうべ)を挙げ
彼の男 万雷の声もて怒号せり
世人は そを聞かず
濤声は 虚空に漂うのみ
彼の男 拘泥せず

丘上の愚者
悠揚として落日を眺む
頭上なる双眸は
四海の廻転を端倪して久し

世にある人 彼を好まざりき
その好むところを語るのみ
彼の男 心底を明かさず

彼の男 衆生の声を聴かず
その愚かなるを知ればなり
彼を慕う者ついにあるまじ

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コメント

衆生は愚か鳴らず

それが、俺の今の。ひとまずの結論です。

誤字をなおさないのはお許しを

投稿: メルヘンひじきごはん | 2006/01/26 17:36

ホリエモンに関する報道を見るのが嫌で、ここ数日なるべくテレビを見ないようにしています。
特に男性コメンテーターの「男の嫉妬」まるだしでしかもそれが誰にもバレテナイと思っている様子(自覚もないんでしょうし当たり前かもしれませんが)を見るのが耐えられず‥。

今日のおだじまさんの文章を読んで少し気持ちが落ち着きました。

投稿: マーミー | 2006/01/26 19:01

4者会談。
小田嶋閣下、ポール、ヨーコ、そして女装のマイコー。シュール。
 
http://www.cnn.co.jp/showbiz/CNN200601260009.html
 
小説。
挑戦なさってはいかがでしょう?我々一般人がイチからはじめるよりは断然近い位置おられるかと。。脳内トルシエとか、あの辺りを別路線で膨らませると結構面白いと思いますよ。


 

投稿: かず | 2006/01/27 11:54

 コラムって詩や短歌みたいなものでしょう。短い字数で表現するために、あれやこれやと工夫をするので、短いからといって少ない労力で書けるわけじゃないが、原稿料は字数で決まるので、割が合わない。

投稿: Inoue | 2006/01/27 14:07

「丘上の愚者」いいですね。

土井晩翠みたい(読んだことないですけど)。
こういう偉業に接すると、米英の植民地じゃないんだから、小学生に幼稚な英会話させる時間があるなら古文と漢文を徹底的に教えこんでくれという気持ちになります。個人的には「古文研究法」を30年ぶりに読みたくなりました。

小説、賛成です。

ガラ電で野球の試合経過を伝えるバイトのときの話などを読むと、いい短編小説を読み終えたときの心地よさを感じますので。

文章書ける人が小説書かないのは、「もったいない」です。

投稿: よし | 2006/01/27 17:11

 ガラ電は良かった。文字にすれば同じでも、特定の方法でしか伝えられない叙情が感じられます。

投稿: Inoue | 2006/01/27 19:29

マスコミお得意の「手のひら返し」ですな。
いや、堀江が犯罪者なら、それでもいいんだけどさ。その犯罪者をこれまで散々持ち上げてテレビに出演させて視聴率を稼いでいた側の責任はどうなるのよ、と。

あ、あと、ネタにマジレスしている人がいるけど、小説なんて書くわけないじゃんw
素人に文芸談義をかまされる小田嶋先生萌え~ww

投稿: ROM | 2006/01/28 03:02

今朝の新聞でアサヒパソコンの休刊を知りました。
「価格bom」ももちろんですが、文月涼氏の辛口デジカメコラムが読めなくなるのも寂しいですね。

投稿: Noisy | 2006/01/28 10:40

編集子Kです。
ご愛読いただいていた皆さん、ありがとうございました。
小田嶋さんの連載は論座に引き継がれます。4月から
のスタートになると思います。ペースは月刊になりますが、よろしくお願いします。

投稿: 編集子K | 2006/01/28 14:20

 う~ん、勝Pめげんなよ。そして、これからも小田嶋センセの面倒見頼んだぜ。

投稿: あおきひとし | 2006/01/28 19:37

>編集子K様
17年間お疲れ様でした。
創刊号あたりの小田嶋氏の担当された「パソコン度チェック」の載った号、今でも探せば出てきそうな気が(笑)

>小田嶋さんの連載は論座に引き継がれます。
おお、そうですか。とりあえずはよかった。
それにしても、「噂の真相」→「Asahiパソコン」→「論座」とは数奇な運命をたどった連載ですね。

投稿: Noisy | 2006/01/29 10:22

 Foolの訳は「愚者」よりも「阿呆」のほうが良いのでは。格調ありげなアホらしさが素敵じゃないかと愚考する次第であるが。

投稿: あおきひとし | 2006/01/29 21:35

 小田嶋さん いつも愛読しています。
 本も全部買っています。

 私は弁護士をしているのですが、ホリエモン報道に関しブログで書きました。お暇があったらのぞいてみて下さい。

撫明亭日乗
http://skondo-life.cocolog-nifty.com/dairy/2006/01/post_78dd.html

投稿: 近藤早利 | 2006/02/02 07:15

・メルキオール Melchior メロディ&クワイヤ?
・カスパー Casper パー カッション

・バルタザール Balthazar? ←これが解ける方、いらっしゃいませんかね…

投稿: メルヘンひじきごはん | 2006/02/06 17:36

えっと、読売ウィークリー拝見致しました…ブラフでなく、ほんとーに終わってしまわれたのですね、連載…毎週楽しみだったのですが、残念です。

そのうち、1月最終週のそれを、どっかで手に入れようと思ってます。素顔の小田嶋さんをかいまみた思いがしました。

コースター、今考えると少し恥ずかしく、子供な俺を思うものです。青春でした。

投稿: メルヘンひじきごはん | 2006/03/11 13:45

やっちゃいましたはやとちり。

投稿: メルヘンひじきごはん | 2006/03/16 23:02

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