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2005/07/04

酔っ払いの後払い

 夢。
 懐かしい人が出てきた。
 20年ほど前、色々な機会でごちそうになった。
 お互い大酒飲みだったので、最後の店では、何を話したのかろくに覚えていないケースが多かった。
 実際、たいした話はしていなかったのかもしれない。
 酒飲みのつきあいには神秘的なところがあって、話の内容はおぼえていなくても、「腹を割って話し合った」という感覚だけをなんとなくおぼえていたりする。
 酒を飲まなくなってみると、そういう意味で親しかった人とのつきあいが途絶える。
 残念といえば残念。

 おそらく、われわれは、「親しさ」という感覚をサカナに、並んで酒を飲んでいただけなのだと思う。
  とはいえ、同じ大酒飲みとして「共に滅びつつある者の連帯感」みたいな、甘美な(←飲んでいる間だけは、という限定付きだが)感覚を共有していたことは確かなわけで、そいつを失ってみると、私には、実のある交際が、ほとんどまるで残っていなかったりする。
 友情? 冗談じゃないよ、という、醒めた感覚が、連綿と続いているわけだ。
 まあ、仕方がないのだろう。
 酒飲みの友情というのは、あれは、どっちみちニセモノだったわけだから。
 他人を遠ざけて自分のタコツボに入っている者同士が、飲んでいる間だけ友だちごっこをする、と。
 まあ、孤独の複数形ってやつだ。

 Tさんはどうしているだろう。
 私の予想では、98パーセントの確率でろくなことになっていないと思う。
 いずれ、葬式で会うことになるのだろうか。
 こっちだけ素面でなんか会いたくないし。
 といって、両方が素面だったら、たぶん間が持たない。たぶん、1時間が限度だろう。

 誰が相手であれ、いい年をした男同士が、酒抜きで1時間以上、面と向かって話せるものではない。
 結局、酒というのは、「二人の人間が、互いに相手の話を聞かずに自分の話だけをしつつ、それでいて各々が、《自分たちはいま語り合っている》というふうに思いこむためのツール」として、非常に有効なものだったということだな。

 つまり、酔っぱらいというのは、

  1. 他人の話を聞かない。
  2. 自分の話ばかりする。
  3. 他人が自分の話に感心していると思いこむ。

  という、失礼かつ無神経かつ傲慢な人々であるわけなのだが、そういう人間たちが同じ空間に揃うと、あーら不思議、互いの失礼が互いの無神経によって打ち消されて、彼らの間には共有された傲慢としての擬似的な友情が成立するのである。素晴らしい。

 さて、とすると、問題は、「酒をやめてみたら友だちがいなくなってしまった人間」はどうしたら良いのかということになる。
 残念だが、答えはひとつ、「友だちなんか要らない」ということに尽きる。
 トレインスポッティングという小説の中で、登場人物の誰かがこう言っている。
「ジャンキーには友だちなんかいない。売人がいるだけだ」
 そう。大人になった人間は、一人で生きていく方法を身につけなければならない。
 子供には友達がいる。
 酔っぱらいには酒があり、ジャンキーにはヤクがある。
 素面の大人には、何があるんだろう。
 blog?
 ははは。
 寝よう。
 ……じゃなくて、仕事だ。
 大人の男には、仕事がある。
 仕事と睡眠。
 これ以上、ほかに何が必要だ?

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コメント

小田嶋さん、寝る前にサブタイトル決めましょう。
デザイナーがしびれを切らしています。
In His Own Site ----ネット巌窟王の電脳日記ワールド
もしくは
イン・ヒズ・オウン・サイト----ネット巌窟王の電脳日記ワールド
はどうでしょう。

帯に「平成日記文学の金字塔、今ここにそびえる」

投稿: 編集子K | 2005/07/04 17:00

二番目の、カタカナ表記の方にしましょう。
イン・ヒズ・オウン・サイト――ネット巌窟王の電脳日記ワールド
 が良いかと思います。

 帯も良いですね。
 金字塔。
 ピラミッド。
 墓標といえば墓標ですが、なあにかまうことはありません。ヘタに縁起をかついだりしないのがデジタル野郎の心意気です(笑)

投稿: 小田嶋 | 2005/07/04 19:49

小田嶋隆のイグアナ日記

投稿: 774 | 2005/07/04 19:50

confusion will be my Epitaph...

投稿: gasu | 2005/07/04 20:26

おー、ようやく決まりましたね。これで決定させていただきます。いちおうgoogleでチェックすると、カタカナはここしか出てこず、英語の場合も文中の「彼自身のサイト」という一般的な意味でしかないようなのでOKでしょう。googleで検索できないものは、宇宙に存在しません。
 タイトルについてご意見、アイデアをいただいたみなさんありがとうございました。ようやく5万行に取りかかる意欲が湧いてまいりました。小田嶋さんもきっとそうだと思います。次は表紙の装丁でまたおうかがいします。

投稿: 編集K子 | 2005/07/04 21:00

 タイトル『イン・ヒ・オウン・サイト~ネット巌窟王の電脳日記ワールド』ですか、ようやく決まりましたね。でも、表紙画は小田嶋画伯のイグアナでいきたいですね。

投稿: あおきひとし | 2005/07/04 22:29

私も10年位前から断酒をして今日に至っております。しかし月に一度程度は呑んでいます。
このブログ、最初から最後まで一気に読みました。そうか!オレだけじゃなかったのだ!世間の仲間はみんな同じことを感じているんだなと、改めて思い知らされました。その情熱を仕事にぶつけて傑作をものして下さい。読者にとっては、それがなによりですから。

投稿: ハマの住人 | 2005/07/04 22:37

>編集子Kさま。
 五万行の件ですが、
 プリントアウトをそちらでやっていただくわけには参りませんか?
 自宅のインクジェットプリンタで5万行印刷するのは、なんだか暴挙という感じがいたしますものですから。
 いや、そちらにとっても簡単な作業でないことは承知しております。
 でも、五万行を画面で読むというジョブもまたこれはこれで一種伊能忠敬な荒仕事ではあるわけでして……そういったような次第ですので、ぜひそちらで印刷(横書きのラフ印刷で十分です)した上で、こちらに送っていただくと助かります。
 ……と、以上のような、事務的な連絡を、いちいち公道上に書き殴っているのも妙な話だとは思うのですが、まあ、乗りかかった船ということで。
 ではでは、よろしくお願いします。

投稿: 小田嶋 | 2005/07/04 23:50

小田嶋様
わかりました。日記時代のテキストは98年から04年まで年別に整理してあります。ブログになってからのテキストはタグとかコメントとかが多く混じっていて、結構編集が難物です。とりあえず日記時代のものから順次お送りします。一度に送るとやる気が失せるでしょうから。

投稿: 編集子K | 2005/07/05 11:43

プロの編集作業のやり取りまで読めるなんて、まぁ、お得。
 
電車やスーパーで「業務連絡、業務連絡ぅ」を聞いている時の感覚というのか。
別業種ながらも労働者としての連帯感を勝手に持たせて頂いております。
♪働くおぢさん、働くおぢさん、・コ・ン・ニチワっ、と。

投稿: かず | 2005/07/05 12:19

>gasu

お前は俺か?
俺なのか!?

投稿: 柳 | 2005/07/05 12:30

>プロの編集作業のやり取りまで読めるなんて

このブログ、すごいファンサービスだよね。

投稿: ファン | 2005/07/05 14:14

小田嶋先生

>・・・デジタル野郎の心意気

おみそれしました。
き○たま縮み上がらせて日々すごしている凡夫とは
やはり男の格が、ちがう。
懦夫をして立たしめるおことばです。
精進いたします。

投稿: よし | 2005/07/05 15:41

小田嶋様
今刷ってます。ただ、共用プリンターで1000枚以上刷ることになると迷惑がかかるので、古いプリンターを拾ってきてローカルでやってます。で、ドラムが汚れているらしく、縦筋が2本入ってしまいます。原稿は読めます。ご了承ください。

投稿: 編集子K | 2005/07/05 15:41

小田嶋様
今、98、99年の日記、約17000行分のプリントアウトを宅配便で送りました。各年のテキスト量を見ると、
98年(8月から) 180KB
99年 531KB
00年 486KB
01年  83KB
02年 227KB
03年 54KB
04年(1月のみ) 25KB
と、99年が最大です。ここを乗り切ればゴールはすぐそこです。頑張ってください。
7月15日が締め切りです。

投稿: 編集子K | 2005/07/05 17:46

>>03年 54KB
>>04年(1月のみ) 25KB

 絵に描いたような三日坊……。あいや、ファンにとって、実に長く過酷なトンネルでしたねぇ(´-`).。oO (←遠い視線)

投稿: えいじ | 2005/07/06 01:04

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