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2005/05/25

呉儀ぶり

呉副首相会談キャンセル、海外メディアも注視

 呉儀さんって、去年まで巨人軍のヘッドコーチだった須藤豊さんに似てますよね。

 この人の名前については、なぜか朝日新聞だけが「呉儀(ウー・イー)」と、中国語(←たぶん北京の)発音を併記している。なぜだろう。
 そのほかのメディアは、漢字表記のみ。テレビのアナウンサーも「ごぎ」と読んでいるのだが。

 わが国のマスメディアは、いつの頃からか、「韓国・北朝鮮の人名については、漢字表記とハングル発音を併記する」という不可思議な基準を横並びで採用するようになっているわけなのだが、中国人の名前については、ずっと漢字表記のみだったはずだ。
 この件については、以前、ホームページにメールをくれた方から
「中国語の発音は、上海と北京でもまるで違う。というよりも、そもそも、漢字という表意文字のメリットは、広大な中国文化圏において、地域によってまるで違っている単語の発音を、少なくとも文字の上では統一できるというところにある。であるから、たとえば毛沢東という語は、文字としては全漢字文化圏で共通だが、発音についてはその土地それぞれの読み方で良いのだよ」
 というふうな説明を受けたことがあって、なるほど、と思っていた。
 朝日新聞は、新しいスタンダードをとりいれたのだろうか。それとも、昔からこんな感じだったっけ?
 いずれにしても、朝鮮半島の名前だけでもわずらわしい(だって、表記と発音を二通り暗記しないと話ができないわけだから)と思っていたのに、中国人の名前まで二重表記になったらかなわない。

 漢字表記を採用するなら読みは日本語読みにすべきだし、現地発音を尊重するのなら、カタカナ表記に統一するほうが自然だ。
 呉儀をウー・イーと読まされたり、金大中という文字にキム・デジュンという音を当てはめねばならない現状は、大げさな言い方をすれば、日本語にとって言文一致の原則を損ねる危機的状況だと思う……って、やっぱり大げさだな(笑)。

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コメント

これって確か「相互主義」が原則で、朝鮮半島と日本では相手国の地名や人名を相手国読み(コイズミvsキムジョンイル)して、日中間はお互いに自国読み(シャオナントカvsコキントウ)と決めているのではなかったでしたっけ。

投稿: かすみ | 2005/05/25 21:46

http://www3.sppd.ne.jp/tokusyu/nhk/jinmei.html

上のurlに、NHKの表記基準(の原則)がかかれていますね。
必ずしも、書いてある通りに実行されているわけではなさそうですが。

投稿: 小田嶋 | 2005/05/25 23:26

中国の地名・人名は原則として、広州(こうしゅう)、江沢民(こうたくみん)のように日本で通用する漢字(中国の簡体字ではなく)で書き、日本語読みとする。
上海(シャンハイ)、青島(チンタオ)など原音読みの慣用が広く行われているものは、原音読みとしている。

韓国・北朝鮮の地名は原則として釜山(ふざん)、大同江(だいどうこう)のように漢字で書き、日本語読みとする。ただし、ソウル、ピョンヤンはカタカナで書き、原音読みとする。京城、平壌は使わない。
人名は原則としてカタカナで書き、原音読みとする。日本に在住する韓国・朝鮮人の名前は漢字で書き、日本語読みとするが、本人の希望するときなどは、カタカナで書き、原音読みする場合もある。

 上記urlからの引用です。

投稿: 小田嶋 | 2005/05/25 23:29

http://okweb.jp/kotaeru.php3?q=1072674

自己レス連投失礼。↑のやりとりもなかなか面白いですよ。。

投稿: 小田嶋 | 2005/05/25 23:35

はじめまして。関心を持っている話題なのでコメントさせてください。

韓国人は普段の生活で漢字をほとんど使いませんし、人名に至っては「自分の名前を漢字でどう書くかは知っていても、他の人の名前を漢字でどう書くかは知らない」と言った程度ですので、日本のメディアもわざわざ漢字名を併記する必要などないのではないかと思います。こと人名に関して、韓国人ははっきりと音声主義です。

それに対して中国人は極端なまでの表記主義ですね。まず漢字表記があって音声はあくまで付属物。私はよく中国人に「俺の名前は日本語だと何て読むんだ?」と訊かれますが、これは小田嶋さんが言及されている通り「表記こそが自分の名前であり、それを何と読むかはローカルルール次第」というポリシーから来ているみたいですね。だから日本では胡錦涛はコキントウでいいんですよ。小泉も向こうではシャオチュエンです。

それにしても朝日の「呉儀(ウー・イー)」式表記は謎ですね。「現地音を添えることがすなわち相手への礼儀」という短絡があるのかもしれませんが、中国人の表記主義の原則からするとややピントのずれた礼の尽くし方と言わざるを得ません。

>ただし、ソウル、ピョンヤンはカタカナで書き、原音読みとする。京城、平壌は使わない。

これは小田嶋さんの発言ではありませんが、ちょっとフォローさせて下さい。

「ソウル」と「京城」は互いに対応しているわけではありません。現在の地名=ソウル、以前の地名=京城、です(ソウルに漢字表記はありません)。

ちなみに中国ではソウルを「漢城」と表記していますが、これに反発した韓国が最近になって「首爾」と呼べと主張し始めました。発音が「ソウル」に近いからとのこと。中国人は全く相手にしてませんけどね。

投稿: 3pj4 | 2005/05/26 00:49

えー、Webぐるぐるしましたら、こちらに解答が。
(ページのかなり下の方です)
http://www.ytv.co.jp/announce/kotoba/back/1101-1200/1141.html
なんとIBMの差し金だったとは(笑)。

上記ページ執筆者の道浦さんは読売テレビのアナウンサーです。
↓こちらがトップページ。
http://www.ytv.co.jp/announce/kotoba/

ちなみに「ソウル」には元々当てはまる漢字がありません。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BD%E3%82%A6%E3%83%AB%E7%89%B9%E5%88%A5%E5%B8%82
http://www001.upp.so-net.ne.jp/fukushi/korea/seoul.html

「首爾」表記には中国メディアも一部対応しつつあるらしい。
http://k-mokuson.at.webry.info/200502/article_80.html

投稿: かくた | 2005/05/26 01:40

>3pj4さん >かくたさん
 なるほど。勉強になりました。
 IBMが暗躍していたとは(笑)
 もしかして、中国の電脳化をにらんで、人名の検索性向上を狙っているとか……

 blogのエントリーは、読者の側からの添削校閲補足解説が期待できる分、活字の文章より柔軟性がありますね。
 まあ、荒れる時は荒れるわけですが。

投稿: 小田嶋 | 2005/05/26 02:08

日本語教師をしているワタナベと申します。
韓国人も中国人も同じ漢字の学生がいますが
「李正明」、韓国人のほうは
「イ・ジョンミンです」と自己紹介して
中国人のほうは「リ・セイメイです」って言います。
中国の朝鮮族も「リ・セイメイ」と日本語読みをします。
名前や自己紹介の仕方を聞くと顔は似ていてもどこの国からきたかわかるような感じです。

でも「陳鋼」さんや「万紅」さんは、中国語の発音のほうが日本で暮らすにはいいような気もします。

金大中は、私が小さいころは「キンダイチュウ」でしたが、いつのころからか「キムデジュン」になりましたね。

投稿: ワタナベ | 2005/05/26 09:14

>IBMが暗躍していたとは(笑)
日本IBMの北城会長は経済同友会の代表幹事でもあるので、実業界からの要請と考えてよいのかもしれません。

あと、私見ですが、原語に近い表記を使うことで「オレはその件に関しては詳しいんだよ」と暗に誇示する効果はあるようです。
ドイツ文学者がゲーテを“ギョエテ”と書いたり
大江健三郎がベトナムを“ヴィエトナム”と書いたりするアレです。
悪しき教養主義ととるか
学術的植民地根性と見るか
それとも表意文字と表音文字を自由に使い分ける日本人特有の異文化受容に対する柔軟性と考えるか(笑)。

投稿: かくた | 2005/05/26 14:22

 変な原語表現という点では立花隆の右に出るものはないですよ。通俗的な雑誌ジャーナリズムの世界で30年もメシをくっているのに、意識的に世間の基準からずらした言葉を使うのは、ある種の教養主義でしょう。
 東大で「教養とは何か」というような講義をする人だし。

投稿: Inoue | 2005/05/26 14:45

スールシャールですがなにか?

投稿: ハオハイドン | 2005/05/27 23:15

 そういえば、
 ソルスキア→スールシャール
 エドバーグ→エドベリ
 と、唐突な言い換えが頻発した時期がありますね。なぜだったのでしょう。
 印象に残っているのは、ピーター・ガブリエルが、ある時期からピーター・ゲイブリエルと表記されるようになったことです。
 私の記憶では、朝日新聞の学芸欄に載った来日インタビューの記事がきっかけだったように思います。
 おそらく、記者に、「悪気」は無く、単に「聞こえた通りに書いただけ」だった(っていうか、イエス時代のピーターガブリエルを知らなかった?)のだと思いますが、我々の世代の者には「オレのピーガブを……」という怨嗟の声が巻き起こっておりました。

投稿: 小田嶋 | 2005/05/28 00:56

ピーター・ガブリエルはジェネシスだったと思いますが……。

投稿: かくた | 2005/05/28 03:20

おおお。
ジェネシスでした。
なんという誤記ぶりw

投稿: 小田嶋 | 2005/05/28 05:05

中国人名の日本語式カタカナ読みは止めた方がいいと思うんですけどねえ。だって日本人は「それが現地語読みなんだろう」と思うでしょうが、その通り発音したって通じるわけないですもん。あの中国語初学者には忌々しい四声をがあるわけで。
現地読みしたつもりが「俺の名前は日本語でそう読むのか」と思われたら、これは喜劇でしょう。だったら日本式音読みで充分。

こう書くと小田嶋さんならRuud Gullitを連想するのではないかと。Guの発音は日本人には困難で、カタカナで無理矢理表記すると「フ」にしかならないので、昔は
「フリット」表記でしたものね。「フリット」と日本人に呼ばれることはGullit本人が「Fritter(揚げ物)みたいでイヤだ」と言ってます。英語読みの「グーリット」で本人に通じますからね。

投稿: 宮嶋陽人 | 2005/05/28 08:35

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>> ところで新聞界が最初にこの問題で混乱したのは 昭和六年の満州事変の時だった。大陸からの膨大な電報の中に 続々と中国固有の難解な地名・人名が現れるので、 これを受ける新聞、通信社も大変だが、読者にとっても、 難解な文字ほど振り仮名がないので、 会話になると不便この上もないという声が起きた。 そもそも、この中国文字の音符統一に先鞭をつけたのは、 高田知一郎編集局長時代の報知新聞である。大正後期、 報知は中国の地名、人名にすべて中国式の振り仮名をつけ、 難解な文字は全部カナ文字に改めたが... [続きを読む]

受信: 2005/05/26 02:59

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