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2005/04/13

お世辞

 ……またリフォームの詐欺にひっかかっている。
 屋根の葺き替えと、ずっと以前に設置した床下の換気扇(←「有名な詐欺ですよ」「シロアリの写真は持ち込みです。ヘタをするとシロアリ本体さえ持ち込む連中ですよ」と、テレビ番組のビデオまで与えて親切に教えてさしあげたのに)の点検修理。しめて200万円ほどらしい。あああ。
 
 何度注意しても、どんなに言い聞かせてもわかってもらえない。
 一度など、明らかなヤクザの建築屋(ビルの一階がおとなのおもちゃショップ。事務所の中は代紋グッズだらけ。壁に日の丸、襲名披露の写真などなど。映画のセットみたいな典型的なヤー公威圧の数々)に乗り込んで、やっかいな交渉のあげくに契約解除を獲得してきたのに、それでもまだわかってくれていない。
 余計なお世話。と。
 どうせそういうふうにしか思ってないんだろうな。
 あんなに露骨な詐欺にひっかかっておいて、それでもなお、私よりも、「医者の免許を持っている」とか言い張っていたセールスのオヤジ(←おまけに交通事故で妻子を残らず亡くしたんだとさ。そうですか悲劇の医師ですか)の言い草の方を信じている、と。
 何をやっても無駄、ということだ。
 無力感。
 っていうか、誰に腹を立てたら良いんだ?

 以前、だまされる人間に共通する特徴は、愚かさではなくて、傲慢さなのだ、という意味のことを書いたことがあるが、実際、だまされた人間は、自分がだまされたということを認めようとしない。
 のみならず、自分を被害者扱いにする人間の無礼さを責めさえする。
 私は、そんなバカではない、と。
 
 この種の訪問詐欺にあう人間は、おそらく、経済や法律に関する判断力の甘さもさることながら、より以上に、対人調整能力に根本的な問題をかかえているのだと思う。
 他人を疑ってかかるという作業が苦手なわけだ。
 いや、より遠慮のない言い方をするなら、「お世辞に弱い」ということだ。
 だから、この人たちは、モノを買う時に、自分の方から店に出向く形式より、先方が訪問してくるカタチを好む。だって、訪問販売の人間は、必ず過剰なお世辞を吐き散らして行くから。
「素晴らしいお庭ですねえ」
「えっ? ○○歳? ウソでしょう。絶対そんなはずはありません」
 とか。
 で、哀れにも、そのクソまみれのお世辞を言う人間を信用するわけだ。
「すっごく愉快な人でね」
 と。
 あああ。
 一人暮らしというのは、かくも老人を脆弱にしてしまう。
 ポイントは、カモパーソナリティーの人間が、契約内容や商品力、価格といった個別の条件ではなくて、セールスにやってくる人間そのものを信用するという、そこのところにある。
 だから、商品がどんなに怪しげでも、価格がどんなに法外でも、彼らは根本のところで、「親切な人」や「良さそうなお兄さん」が推薦するブツを疑うことができない。

 長年、お世辞を聞いて暮らしてきた人間は、お世辞無しで生きていくことができなくなる。
 というよりも、お世辞を言わない人間を信用しなくなる。
 実態は逆で、お世辞を言う人間の方がずっと怪しいのだが、彼らはそう思わない。
 お世辞を言わない人間は、彼らにとって単に「不親切な人」「失礼な人」ということになる。
 一方、自分に向かってお世辞を言って来る人間は、「もののわかった人」「庭の魅力がわかる人」「気の利いた人」「趣味の良い人」「礼儀正しい人」ということになる。ah,poor old lady...
 たとえば、学校の教師は、在職中の何十年間を、父兄や同僚から常に過分な評価(なんというのか、先生と呼ばれる人間があらかじめ履いている人間性の下駄、みたいなものですね)を得て暮らしてきた人たちだ。
 だから、その彼らは、自分に対して普通の口の利き方をする人間を、「無礼な人間」という風に判断する。
 で、お世辞を言ってくる初対面のリフォーム会社のセールスの方を信用する。
 いや、単に淋しいということに過ぎないのかもしれないが。
 いずれにしても、どう対応してよいのか、私にはもうわからない。
 オレもお世辞を言うべきなのかもしれない。
 無駄な、歯の浮くような、白々しくも空々しい下品なお世辞。
 ご老人に信用されるためには、見え透いたウソをつかなければならないのかもしれない。
 バカな話だが。

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コメント

淋しい老人がいます。こんなところでくすぶってはいるが、昔は。ああ、権力を再度振るいたい。そんな老人のプライドをくすぐりつつ、追い込みます。社長の財力でしたら、200万くらいのプロジェクトはいつでも発動できましょう。もちろんだよ。では、社長、御決断を。こうして無意味な公共投資リフォームが実現。ただお世辞をいうのは虚しいでしょうから、その代償として息子&孫支援プロジェクトの決断を迫ってみましょう。

投稿: pecsmo | 2005/04/13 17:12

 帰省する度に、使えもしないウン十万の家電製品や、訳のわからん健康食品に出くわしているんで、身につまされる話ではありますが、年寄りにとっては、遠くの息子より、身近な詐欺師ですよ。何しろ連中は玄関に上がった途端に説教なんかしませんからね。煽てるだけで。しかもうちの年寄りは、私が帰省して、それを実際に目の当たりにするまで、そんなもの買ったなんて一言も言わないんですよ。

 この手の被害から逃れるためにも、国自体が、遠隔地監視モニターの開発と提供に乗り出して、家族に保護監視させるべきだと思いますね。

投稿: えいじ | 2005/04/13 17:22

小田嶋さま。
成年後見制度を利用なさってはいかがでしょうか。契約を後から取り消すことが簡単になります。
弁護士や司法書士にやってもらうと謝礼が必要ですが、自分が後見人になるなら、2万円くらいでできるそうです。
200万円ポンと出せる財力がおありなら、安いものではありますまいか。
日常的な買い物の範囲ならできますので、生活に不自由はないと思います。

投稿: Inoue | 2005/04/13 20:21

>Inoueさん

成年後見制度ですか。なんだか、良さそうな感じの名前ですね(笑)。
知り合いの弁護士がいるので、相談してみます。
もっと早めに相談してみるべきだったのでしょうね。

投稿: 小田嶋 | 2005/04/13 22:05

 お近くの整形外科に行くのを日課としてもらったらどうでしょうか。
 だいたい年寄りなら、軽い変形性腰痛とか、膝痛とかがあって(なくても整形さんが病名を見つけてくれます)、それをダシに、毎日整形のリハビリに行きます。そこで、ウォーターベッドとか、各種電気などをかけて(毎日やっても安全に何の問題もありません)、リハビリ室の人にやさしい言葉や、お世辞も言ってもらえます。毎日歩いて整形に行くので運動にもなりますし。老人医療ですから毎日行っても本当に安いです(初診は多少高くても、その後は目茶安)。薬漬けの心配もあまりなく、お得で健康的な社交場ですので、お世辞・社交の欠如によるカモ化阻止の一助となるかと。はい。

 当方リハビリ室勤めですが、大事なお常連様であるわがままな年寄りのご機嫌そこねるなんてことをしたら、オーナーであるドクターに言いつけられて、職を失ってしまうでしょう。ですからシルバー様にご満足いただけるよう、絶妙なお世辞が言える熱心な聞き手であるべく、切磋琢磨しております。
 繰り返しますが、毎日行く、これがキーです。そうすれば、大切なお得意様として相当のわがままがきいてもらえます。徒手マッサージ、理学療法などを希望すると、さらにスムーズに毎日行けるかと思います。

投稿: あーもんど | 2005/04/14 00:14

200万出しても惜しくない自尊心。買い物症候群のOLに似てるなあ。褒められることに何にも代えがたいエクスタシーを感じる人と、おだてられると鼻白む私みたいな人間。200万で幸福なひとときが買えるならいいじゃない? お金に余裕あるなら。死ぬまで誰も褒めてくれず不愉快な日々を送るより。

投稿: seven | 2005/04/16 17:25

だます側からしてみると、チョロくだまされる人は、いつかは誰かにひん剥かれる、それならば自分がひん剥いてなぜ悪いということですかね。私も年老いつつある両親がいるので、頭イタイです。数年前には屋根の葺き替えでやられたようです。

投稿: きっき | 2005/04/21 16:48

現代の日本で、指折りの良質なシニシストの親が、現代日本で、最も典型的な「カモ」ってのも、ある意味凄いハナシですね。

投稿: truely_false | 2005/04/21 22:40

 埼玉県富士見市に住む80歳と78歳の姉妹が、複数の訪問業者に勧められるまま、この3年間で数千万円分のリフォーム工事を繰り返し、全財産を失った。姉妹は認知症で身寄りもなく、家が競売に掛けられて、初めて近所の人が気付いた。調査した建築士によると大半が不要な工事で、判断能力のない老姉妹が食い物にされた形だ。連絡を受けた市が裁判所に競売の中止を申し立て、業者側に対しては、近く債権放棄を求める方針。(毎日新聞)

 他人事じゃありません。4000万円も貯金があって持ち家のあった姉妹が、今や全額預金を引き出され、かつ、700万円の負債を背負って家が競売にかけられたのです。
 しかも、一つの会社が工事をすると、その情報が別会社に流れ、また工事をして・・・と順繰りに仕事を回しているんだそうで、骨までしゃぶる構図になってる。
 被害者がボケてるから、後見人が代わって訴訟をおこす必要がありますが、身寄りがないのでそれも難しい。市にやる気があるなら、適当な弁護士を後見人につけて代理で訴訟をおこす手もありますが。
 「シロアリ駆除」だの「調質」だのとわけのわからない理由で金をむしりとっていったのです。

投稿: Inoue | 2005/05/05 11:15

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