タカダワタル的
ニュース23の特集で、高田渡の葬式をやっている。
そういえば死んだんだったな。
なんと、享年56歳だそうだ。
オレとそんなに変わらないじゃないか。
70歳ぐらいだと思っていた。
見るともなく見ていると、死因が判明。酒が原因で入退院を……とか。
つまり、アル中さんだったわけだ。
知らなかった。
高田渡という人の存在自体、たいして気にもとめていなかった(というよりも、あの時代の日本のフォークミュージックにはアレルギーを持っている。いや、フォークに限らずはっぴぃえんどみたいな昭和の腐れ日本語ロックに対しても)のだが、この人がアル中であるということについて、まったく知識を持っていなかった。
うかつでしたね。
言われてみればなるほど、だな。
だって、顔つきからしゃべり方から、完全にアルコホリックそのものだから。
顔面のツヤのなさと、肝臓の悪そうな顔色。それから、ロレツが完全にナニですね。
で、番組は、タカダワタル的な生き方を、なんだかしきりに美化している。
酒仙方向のファンタジー化バイアス。
何なんだろうね、この、バイアスは。
罪滅ぼしかなにかのつもりなんだろうか。
それとも、制作側の人間に、アルコホリックがまぎれこんでいるんだろうか?
だって、筑紫さん、あんただってわかっているはずだと思うけど、ここまで行っちゃった人間の酒は、ひとつの災害ですよ。
特に身近な人間にとっては、迷惑以外の何者でもない。
だからこそ、晩年は木造アパート暮らしを余儀なくされていた――違いますか?
本人が好んで質素な生活を望んだとか、無欲な人だったとか、物質的には驚くほど恬淡としていたとか、そういうゴタクを並べるのは勘弁してください。あたしは、まじめに聞く気になりません。
要は、この人は、病気だったわけです。
酒以外のあらゆる要素を投げ出さざるを得ないほど深々と酒に惑溺していた、と。
で、収入のほぼすべてをアルコールに変換していたからこそ質素な暮らしぶりを世間に披露していた、と、それだけの話で、カネに執着がなかったわけではない。
むしろ、アルコール依存の患者は、ほとんどの場合、守銭奴です。
しかも病的なケチ。
なぜなら、酒を買うためにいつもいつもカネが必要だから。
ついでに申せば、アル中さんは、病的に嫉妬深くて、おまけにひがみっぽい。というのも、身の回りのすべての人間が自分から去ろうとしていることに気づいているから。
テレビの皆さん。アル中さんの生活については、ぜひリアリズムで描写してください。
要領を得ない演説。突発的な感情の露出。芝居がかった錯乱。突然やってくる眠り。
暴力と自罰。
糞尿の匂いが消えない居室に棲みついた数万匹のダニ。
カビと綿埃。日常的な尿失禁。シミのついたしきっぱなしの布団。ぞっとするような口臭。
そういう本当の生活のディテールに、目をそらさずにフォーカスを合わせてください。
天使みたいな人でした・式の、太宰治以来まるで変わり映えのしない見え透いたウソを、これ以上懲りももせずに塗り重ねて、若い連中に甘ったれた逃げ場所を用意するのは、正直な話、犯罪だぜ。
な。
頼むよ。
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