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2005/04/30

タカダワタル的

 ニュース23の特集で、高田渡の葬式をやっている。
 そういえば死んだんだったな。
 なんと、享年56歳だそうだ。
 オレとそんなに変わらないじゃないか。
 70歳ぐらいだと思っていた。

 見るともなく見ていると、死因が判明。酒が原因で入退院を……とか。
 つまり、アル中さんだったわけだ。
 知らなかった。
 高田渡という人の存在自体、たいして気にもとめていなかった(というよりも、あの時代の日本のフォークミュージックにはアレルギーを持っている。いや、フォークに限らずはっぴぃえんどみたいな昭和の腐れ日本語ロックに対しても)のだが、この人がアル中であるということについて、まったく知識を持っていなかった。
 うかつでしたね。

 言われてみればなるほど、だな。
 だって、顔つきからしゃべり方から、完全にアルコホリックそのものだから。
 顔面のツヤのなさと、肝臓の悪そうな顔色。それから、ロレツが完全にナニですね。

 で、番組は、タカダワタル的な生き方を、なんだかしきりに美化している。
 酒仙方向のファンタジー化バイアス。
 何なんだろうね、この、バイアスは。
 罪滅ぼしかなにかのつもりなんだろうか。
 それとも、制作側の人間に、アルコホリックがまぎれこんでいるんだろうか?
 だって、筑紫さん、あんただってわかっているはずだと思うけど、ここまで行っちゃった人間の酒は、ひとつの災害ですよ。
 特に身近な人間にとっては、迷惑以外の何者でもない。
 だからこそ、晩年は木造アパート暮らしを余儀なくされていた――違いますか?
 本人が好んで質素な生活を望んだとか、無欲な人だったとか、物質的には驚くほど恬淡としていたとか、そういうゴタクを並べるのは勘弁してください。あたしは、まじめに聞く気になりません。
 要は、この人は、病気だったわけです。
 酒以外のあらゆる要素を投げ出さざるを得ないほど深々と酒に惑溺していた、と。
 で、収入のほぼすべてをアルコールに変換していたからこそ質素な暮らしぶりを世間に披露していた、と、それだけの話で、カネに執着がなかったわけではない。
 むしろ、アルコール依存の患者は、ほとんどの場合、守銭奴です。
 しかも病的なケチ。
 なぜなら、酒を買うためにいつもいつもカネが必要だから。
 ついでに申せば、アル中さんは、病的に嫉妬深くて、おまけにひがみっぽい。というのも、身の回りのすべての人間が自分から去ろうとしていることに気づいているから。

 テレビの皆さん。アル中さんの生活については、ぜひリアリズムで描写してください。
 要領を得ない演説。突発的な感情の露出。芝居がかった錯乱。突然やってくる眠り。
 暴力と自罰。
 糞尿の匂いが消えない居室に棲みついた数万匹のダニ。
 カビと綿埃。日常的な尿失禁。シミのついたしきっぱなしの布団。ぞっとするような口臭。
 そういう本当の生活のディテールに、目をそらさずにフォーカスを合わせてください。
 天使みたいな人でした・式の、太宰治以来まるで変わり映えのしない見え透いたウソを、これ以上懲りももせずに塗り重ねて、若い連中に甘ったれた逃げ場所を用意するのは、正直な話、犯罪だぜ。
 な。
 頼むよ。

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2005/04/28

モレノ

磐田VS浦和
NHK-BS1にてテレビ観戦。
モレノな笛。
福西のハンドをゴール認定したマリノス戦の笛もすごかったが、今日は、前半からずっとすごかった。
そして、後半37分にとどめのPK。
あれがPKだということは、ペナルティーエリア内では、DFは石化していないといけないということだな。
つまり、くしゃみをしてもファール、と。
FWがキープしているボールにさわるなんてもってのほかだ、と。

O主審は去年あたりからものすごい勢いで漏れ脳(ry

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2005/04/14

パトロン

 タイガーウッズの絵を掲載したので、ついでに。
 マスターズでは、トーナメントを見に来ている観客を「ギャラリー」と呼ばずに「パトロン」と呼ぶ。
 イヤミな習慣だよね。
 「旦那衆」という感じ。お大尽遊びに特有な特権臭。まあ、「支援者」「保護者」というふうに訳しているところが多いようだけど。
 いずれにせよ、ジョージア州オーガスタという土地柄や、1970年代まで黒人の入場を許さず、いまもって女性の会員を排しているクラブの空気を考慮に入れると、「パトロン」という言い回しには、やはり威圧的な響きというのか、階級的な匂いを感じ取らないわけにはいかない。
 旦那様。綿畑のエンペラーたちの遠い記憶。キャディー(←ポーターだよね)を従えて歩くことが競技の一部になっているゴルフという特権的娯楽の不可思議。
 で、当日、マスターズの中継をしていたTBSの松下アナは、その「パトロン」という言葉を、なんだかとてもうれしそうに繰り返していたわけで、その言い方に、「オレら、オーガスタにいるんだぜ」「そこいらへんのイエローがノコノコ来れるとこじゃないんだぜ」という感じの盛り上がりが漏れだしていたのだな。世界の松下。「世界の」という、猛烈にジャパニーズスタンダードなローカル接頭辞を自分の名前のアタマに冠して平気でいられるセンスのアナウンサー、松下。羞恥心は赤坂の駐車場にでも忘れてきたんだろうか。松下。靴下の方がまだ我慢しやすいな。オレ的には。
 でもって、そのオーガスタの「パトロン」たちがまた露骨なばかりに白人オンリーで、しかもあからさまに白人プレイヤーのみを応援している。
 ディマルコのファインショットには割れんばかりの大歓声。一方、タイガーのナイスショットには「ぱちぱちぱち」というお座なりな(アジエンスのCMに出てきた白人のねえちゃんたちがやっていたみたいな気のない拍手)拍手。
 ディマルコに恨みがあるわけではないけど、タイガーが勝った時は、ざまあみろと思いました。
 チャンピオンズディナーのメニューにチーズバーガーを選んだタイガーは立派だったと思う。
 今後十年ぐらい、タイガーとビジェイ・シンが交互に優勝すると良いな。
 で、チャンピオンズディナーはソウルフードとフィジーの乾燥フルーツ。あるいはヤシガニのドラム缶焼きとか。いっそ韓国人が勝ってキムチディナーを出すとか。丸ちゃんに勝ってもらって、クサヤの干物をふるまってもらうとか。
 とにかく、クラス感のあるトーナメントだとか言ってる中年モテ狙い雑誌のプチブルさんたちをがっかりさせてやってくれ。たのむ。
 

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2005/04/13

祝復活

tiger4

読み返してみると、ここしばらく、私的な愚痴が続いています。
ちょっと恥ずかしいので、トップ項目を掛け替えておきます。
マスターズに勝ったタイガーウッズさんです。
鉛筆描きのスケッチをスキャナで取り込んでフォトショップで色をつけてみました。
ええ、手抜きですね。

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お世辞

 ……またリフォームの詐欺にひっかかっている。
 屋根の葺き替えと、ずっと以前に設置した床下の換気扇(←「有名な詐欺ですよ」「シロアリの写真は持ち込みです。ヘタをするとシロアリ本体さえ持ち込む連中ですよ」と、テレビ番組のビデオまで与えて親切に教えてさしあげたのに)の点検修理。しめて200万円ほどらしい。あああ。
 
 何度注意しても、どんなに言い聞かせてもわかってもらえない。
 一度など、明らかなヤクザの建築屋(ビルの一階がおとなのおもちゃショップ。事務所の中は代紋グッズだらけ。壁に日の丸、襲名披露の写真などなど。映画のセットみたいな典型的なヤー公威圧の数々)に乗り込んで、やっかいな交渉のあげくに契約解除を獲得してきたのに、それでもまだわかってくれていない。
 余計なお世話。と。
 どうせそういうふうにしか思ってないんだろうな。
 あんなに露骨な詐欺にひっかかっておいて、それでもなお、私よりも、「医者の免許を持っている」とか言い張っていたセールスのオヤジ(←おまけに交通事故で妻子を残らず亡くしたんだとさ。そうですか悲劇の医師ですか)の言い草の方を信じている、と。
 何をやっても無駄、ということだ。
 無力感。
 っていうか、誰に腹を立てたら良いんだ?

 以前、だまされる人間に共通する特徴は、愚かさではなくて、傲慢さなのだ、という意味のことを書いたことがあるが、実際、だまされた人間は、自分がだまされたということを認めようとしない。
 のみならず、自分を被害者扱いにする人間の無礼さを責めさえする。
 私は、そんなバカではない、と。
 
 この種の訪問詐欺にあう人間は、おそらく、経済や法律に関する判断力の甘さもさることながら、より以上に、対人調整能力に根本的な問題をかかえているのだと思う。
 他人を疑ってかかるという作業が苦手なわけだ。
 いや、より遠慮のない言い方をするなら、「お世辞に弱い」ということだ。
 だから、この人たちは、モノを買う時に、自分の方から店に出向く形式より、先方が訪問してくるカタチを好む。だって、訪問販売の人間は、必ず過剰なお世辞を吐き散らして行くから。
「素晴らしいお庭ですねえ」
「えっ? ○○歳? ウソでしょう。絶対そんなはずはありません」
 とか。
 で、哀れにも、そのクソまみれのお世辞を言う人間を信用するわけだ。
「すっごく愉快な人でね」
 と。
 あああ。
 一人暮らしというのは、かくも老人を脆弱にしてしまう。
 ポイントは、カモパーソナリティーの人間が、契約内容や商品力、価格といった個別の条件ではなくて、セールスにやってくる人間そのものを信用するという、そこのところにある。
 だから、商品がどんなに怪しげでも、価格がどんなに法外でも、彼らは根本のところで、「親切な人」や「良さそうなお兄さん」が推薦するブツを疑うことができない。

 長年、お世辞を聞いて暮らしてきた人間は、お世辞無しで生きていくことができなくなる。
 というよりも、お世辞を言わない人間を信用しなくなる。
 実態は逆で、お世辞を言う人間の方がずっと怪しいのだが、彼らはそう思わない。
 お世辞を言わない人間は、彼らにとって単に「不親切な人」「失礼な人」ということになる。
 一方、自分に向かってお世辞を言って来る人間は、「もののわかった人」「庭の魅力がわかる人」「気の利いた人」「趣味の良い人」「礼儀正しい人」ということになる。ah,poor old lady...
 たとえば、学校の教師は、在職中の何十年間を、父兄や同僚から常に過分な評価(なんというのか、先生と呼ばれる人間があらかじめ履いている人間性の下駄、みたいなものですね)を得て暮らしてきた人たちだ。
 だから、その彼らは、自分に対して普通の口の利き方をする人間を、「無礼な人間」という風に判断する。
 で、お世辞を言ってくる初対面のリフォーム会社のセールスの方を信用する。
 いや、単に淋しいということに過ぎないのかもしれないが。
 いずれにしても、どう対応してよいのか、私にはもうわからない。
 オレもお世辞を言うべきなのかもしれない。
 無駄な、歯の浮くような、白々しくも空々しい下品なお世辞。
 ご老人に信用されるためには、見え透いたウソをつかなければならないのかもしれない。
 バカな話だが。

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2005/04/12

郵政取りつぶし

 郵便局に対する苦情の続き。
 実は、雑誌の配達についても、トラブルが続いている。

 簡単に言うと、マンション一階の郵便受けに入らないサイズの雑誌(厚めのもの。総合月刊誌とか)が、毎度不在再配達扱いになっているわけだ。
 と、例によって、再配達のための電話をかけるか、当日22時以降のタイミングで、局に受け取りに出向かねばならない。
 で、当方としては、この事態に毎度対処するのが面倒なので、「郵便受けにはいらない郵便物は、郵便受けのすぐ横にある宅配ボックスに入れてくれ」と申し出る。
 と、局は、「申請の書類を書いてくれ」と言う。
 ええ、書きましたよ。何度も。
 でも、事態は変わらない。
 配達員は宅配ボックスに入れて行く場合もあるし、呼び鈴を鳴らして上まで持ってくる(これもタイミングによってはウザい。だって、昼寝してたりするんだし)場合もある。不在配達票を置いて逃げていく場合もある。まちまち。何度苦情を言っても改善なし。
 バカなんでしょうか?
 それとも、やる気がないわけ?
 宅配便の業者だったら、配達の兄ちゃんは間違いなくクビになっていると思うんだけど。

 ちなみに言えば、宅配便(各社)のお兄ちゃんたちは、これまで、うちに迷惑をかけたことはない。不在、夜間、早朝、冷凍モノ、と、色々なケースがあるにもかかわらず、その都度適切な対応をとってくれている。
 引き比べて、郵便局は、連日クソの役にも立たないダイレクトメールを配達してくるばかりで、かんじんなモノの配達(書留とか小包とか)では、ヘマばかりしている。
 
 郵政民営化に賛成かって?
 っていうか、民営化の段階をすっとばして、いきなりツブした方が話が早いと思います。
 しょせんは、生スパムメール配達業者なわけだから。
 

 

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真っ向サービス(笑)

 午前中に呼び鈴。
 約2秒後(別室にいるので)に出ると、誰もいない。
 いたずら?
 いや、おそらく郵便局なのだな。
 ひとつだけ簡易為替で原稿料を送ってくるところがあって、毎月同じことが繰り返されているのだよ。
 つまり、配達員が、呼び鈴を押してすぐ「郵便物お預かりのお知らせ」(書留などを配達して、宛先が不在だった場合に投函していく書類)を置いていったわけだ。不在じゃないのに。
 
 タイミングからして、バイクにまたがった状態で呼び鈴を押している(っていうか、ピンポンダッシュしている)んでないと、私の返事を聞き逃すことは不可能なはずなんだが、配達員はそれをしているわけだ。

 この不在票を持って局に行くと
「配達係が現在、現物を持って配達中ですので……」
 と、言われてブツを受け取れないことになっている(←当日配達分の受け取りは22時以降だとさ)。中身は為替なんだからどっちみち郵便局で現金化するわけで、とすればはじめから局留めにしておいてもらった方が便利なくらいんなんだけど、そうもいかない。
 で、結局、配達票の裏面に書いてある電話番号に電話して、再配達の時間を指定するか、でなければ、翌日以降に局のゆうゆう窓口に受け取りに行く旨を申し出なければならない。
 非常に面倒くさい。

 実は、この件(配達員のピンポンダッシュ配達逃れ)については、これまで、再三にわたって局の窓口に苦情を申し述べている。
 その度に、通り一遍の謝罪はあるのだが、まったく改善されない。
 さっさと民営化してツブれてくれ。たのむ。

 それにしても、配達係は、どうして再三の苦情にもかかわらず、たった2秒後の返事を待たずにピンポンダッシュを繰り返しているのだろうか。
1.単にめんどうくさいから
2.猛烈に忙しいから
3.再配達になると配達手数料に当たるものが二重取りできるみたいな事情がある
4.ある種の神経症の症状

 誰か事情を知っている人がいたら教えてください。

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2005/04/09

最下位沐浴

浦和VSG大阪戦@埼玉スタジアムを観戦。

結果は上のリンクを参照。
0409
※ピントが合っていないのは、涙のせいかもしれない。

 試合後、赤羽で精進落とし。O野氏と浦和ファンの若者(まあ、われわれから見れば)二人で、焼き肉の炭火を囲む。
 昨年のナビスコ杯以来の再会を祝して、という趣旨の食事会だったのだが。結果的には、最下位の宴ということになった。うん、全然面白くないね。
 ……いや、面白くないのは、オレの駄洒落。汚職自壊そのものは会話が弾んで楽しかったですよ。サッカーの話題を除けば。ええ。

  再会を よろこぶ 宵のおぼろ月
  われら皆 最下位に ころぶよ

 てなところだな。はは。


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西川口再訪

 三日ほど前、1階のコンビニが再オープンした。去年の暮れに突如閉店してから3ヶ月余り、なにかと不便な思いをしていたので、再開は喜ばしい限りだ。
 ただ、フランチャイズのチェーン(系列店名)が変わっている。
 なぜだろう。
 なにかトラブルがあったのだろうか。まあ、なんでもいいや。ともあれ、祝開店。万歳。
 コンビニの上に住んでいると色々と便利なことがある。


  • 牛乳、トイレットペーパー、醤油、カセットコンロのガスボンベみたいなものに対する買い置き不安から解放される。
  • 思い立った時に週刊誌やスポーツ新聞が買える。それゆえ、本屋に行った折りに無駄な買いだめをせずに済む。これは意外に大きい。また買いに来るのが面倒だと思うと、ついつい要らぬ雑誌を買い求めてしまいがちなのだよ、業界人の悪いクセで。で、家に帰ってつまらない雑誌を読んで腹を立てる。健康にも良くないですから、そういうのは。
  • 突発的空腹との共存。いざとなったら下で何か買えば良いと考えるだけで、食い物に対してクールになることができる。うん。オレって、満タン神経症の気味があるから。原稿の締め切りだけは、切らしても大丈夫なんだけど。ははは。
  • 夜、外出から帰った時にさびしくない。っていうか、コンビニの上に住む生活に慣れてしまうと、暗い家に帰ることをどうにもさびしく感じるわけです。うん。間違ってますね、人として、たぶん。

 良いことばかりでもない。
 たとえば、夏場になると、どうしても不穏な感じのティーンエイジャーが溜まる。これはどうしようもない。でもまあ、町の風物詩だからね。私はあきらめています。

 治安と言えば、つい昨日、20年ぶりに西川口を訪れて、驚愕した。あんなにとんでもないことになっていたとは……
 西川口には、その昔、仲の良かった友達が住んでいて、二十数年前はけっこう頻繁に通っていた。だから、あの町についてはだいたいのことはわかっているつもりでいた。
 認識不足でしたね。
 私がちょくちょく顔を出していた当時から、西口の駅付近はあんまり治安の良い場所ではなかった。っていうか、近隣でも最悪の一角とされておりました。
 でも、私自身、赤羽に生まれ育った人間ではあるわけで、多少のことにはびっくりいたしません。路上駐車をする時なんかは、まわりがヤー公グルマだらけなことに多少緊張したりもしましたが、まあこっちがヘマさえしなければ大丈夫という感じで、タカをくくっておりました。
 ところが、ゆんべの西川口は別世界でした。
 川口のブックオフ(探してる漫画があったのでね)を探訪したついでに、晩メシでも食おうと、西川口のイトーヨーカドーにクルマを駐めて、ブラブラと駅まで歩いてみたら、あらまあびっくり、二十年前そのまんまの町並みが、二十年分経年劣化して、二十年分荒れているではありませんか。
 金曜日の夜八時過ぎということもあるのでしょうが、なんと言うのか、空気が薄紫色に染まっている。
 あるいは、四月一日から都の条例が改正されて、歌舞伎町あたりの呼び込みの兄ちゃんたちが一斉に逮捕されたことが、こっちの方面に何らかの重苦しい悪影響を及ぼしていたのかもしれない。
 とにかく
「ここはどこの国ですか?」
 という感じなわけです。
「竹島」とか、そういう単語は、あんまり大きい声では発音したくない――そういう空気ですね。
 西川口をあげるから、その代わりに竹島の領有については、こっちの主張を呑んでくださいという交渉もあるいはアリなんではなかろうか、と思わせる……って、これは冗談なので外務省は本気にしないように。

 普通にメシを食えそうな店が見つからない。
 駅前の吉野家と回転寿司チェーンの店ぐらいがかろうじてコワくない空間ということになる。でも、客層がコワい。隣でメシを食いたくない。たぶん、イカとかタコみたいなカタめのネタは、緊張してうまく飲み込めない。
 暗がりのそこここにタムロっている呼び込みの兄ちゃんたちの人相風体も、めったやたらにヤバい感じだし、歩いている人々もこっちがビビっているせいか、いずれも一癖ありそうな人間に見える。
 いや、びっくりいたいました。ということで、再度クルマに乗って、西川口圏外のファミレスで食事をして帰りました。

 しかしまあ、実際にいま現在西川口に住んでいる人からしてみれば、
「何をささいなことにビビってるんだか」
 ということではあるのでしょうね。
 思い出してみれば、私も、その昔、遊びに来た友人(文京区出身のお坊ちゃまとか)が赤羽のあれこれに過剰にビビることをあざわらっておりました。で、わざわざ南口のピンサロ街を通り抜けるルートで歩いたりしつつ
「気をつけろよ。呼び込みの兄ちゃんには、愛想良くしないとヤバいぞ。生意気な断り方すると囲まれたりするから」
 などと、出来の悪いでたらめを吹き込んだりしていたものです。
 西川口在住の皆さんは、どうかお気を悪くなされないように。
 ついでに竹島在住の皆さんも、ぜひ。
 ん? タケシマではない。ドクトと呼べ、と?
 そう呼べば、どく、と、そういうことですか?
 え、違う?
 っていうか、この問題はあんまりこういうカタチでいじらない方がいいですね。わかりました。さようなら竹島のみんな。
 

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