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2004/11/17

ご学友

 ここ数日、「ご学友」という立場の人たちが次々とテレビの画面に現れる。
 その誰もがテレビカメラを前に、完璧な敬語を使いこなしている。
 びっくりだ。
 まあ、そういう能力を持っていなければご学友なんてやってられないんだろうが、それにしても驚くべき鍛錬と才能だと思う。
 ちなみに私は、事前に原稿を書いて、そいつをまた慎重に推敲すれば、なんとか80パーセントぐらいの敬語は使えると思う。
 でも、アドリブは到底無理だ。謙譲語と尊敬語と丁寧語を過不足なく使い分けることがまずできないし、どうせ慇懃無礼(丁寧すぎてイヤミになること。皇室報道にまわされた、レポーターのほぼ全員が、この線に落ち着いている)に陥るに決まっている。
 ご学友の人々の敬語には、敬語を扱い慣れている人間ならではの自然さがある。
 あるいは、敬語を使っていながら緊張していない、というその構えのあり方が、画面のこっち側から見ていて見事に見えるのかもしれない。
 
 でも、あんなふうになりたくはないな。
 敬語なんか使えなくても、別に不自由しないし。
 敬語を使いこなせないと恥をかくような場面が、この先無いと限ったものではないが、そういう場所や立場とは、なるべく無縁でいたいものだ。
 もし仮に、どうしても敬語を使わねばならない立場に立たされたら、「させていただく」式のインチキ敬語を連発してその場をしのぐことにしよう。
 「させていただく」の連発は、聞かされている身からすると、たしかにちょっと聞き苦しい。というのか、芸のない感じを受ける。でも、仕方がないではないか。誰も、敬語みたいなクソやっかいな身分言語の習得のために割く時間があるわけじゃないんだから。
 「参ります」という動詞が咄嗟に出てこない時には、「行かせていただきます」と言おう。
 何かを食べる時には、「いただかせていただきます」と堂々と発音しよう。

 えー。このたび、ごあいさつをさせていただく光栄にあずからせていただいておりますオダジマでございますが、本日、この場所にお集まりいただかせていただいく……じゃなかった……えーと、お集まりいただいてくださったみなみな様の、貴重なご時間――あ、お時間をいただきまして。というよりも、えー……この時間を割いていただいたことに感謝をさせていただかせていただく件につきまして、わたくしはありがとうという気持ちでいっぱいです。
 ですので、その、わたくしの満腔の感謝をもちまして、あいさつとかえさせていただくことをおゆるしいただきたいと存じている次第ですのでさようなら。
大丈夫。オッケーだ。

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コメント

なるほど。

投稿: GGG | 2004/11/17 16:29

 皇室ご一家と、その取り巻きと、マスコミの特殊な報道姿勢は、一種の伝統芸能だと思って眺めてます。ああいうのが日本の隅っこにあってもいいじゃないですか。さしてコストがかかるわけでなし。
 紀宮殿下は皇籍を離脱しても、やっぱり「さま」でしょうかね。

投稿: 井上 晃宏 | 2004/11/18 09:05

ぼくは敬語は「ゲームかパズル」感覚で楽しんでます。一定のルールがあって、どんな時にどうするかが決まっているものを使うだけで、しかも大してルールがあるわけじゃないから、マージャンや野球に比べればはるかに簡単なんだけど問題は、マージャンや野球みたいに面白いわけではない、ということですね。

「正しい」言葉遣いなんてものがよくわからなくなってきている今日この頃にしては、敬語のルールは比較的統一がとれているのではないかと思います。「こんな奴のためになんで敬語を使わなけりゃならないんだ」と思うと腹も立つでしょうが、パズルだと思ってしゃべって「おっ、今日はうまくいったぞ」なんと思っていると少しは楽しめます。

黒田さんが自宅の庭かどこか、屋外でインタビュー受けていたのにはちょっと驚きました。いえ、別に「会見会場作れ」という意味ではなくて、なんとなくあのスタイルって、中原誠が林葉問題でインタビューされてのを思いだしたからです。

投稿: のぶ | 2004/11/18 15:26

サル山のサルは、どちらがえらいかをマウンティングという儀式で確認しあうと言います。
敬語って、それと似た感じがします。
会話に際して、どちらが上かを確認する。
どちらが下かを思い知らさせる。
そう言うのって、鬱陶しくないですか?

乱暴なタメ口でなく、対等な個人が会話する語法があると良いのですが…

投稿: よみひとしらず | 2004/11/18 18:59

 われわれパンピーがテレビを見て過度の丁寧語に辟易とするのは、それが真心から出たものでもなければ、単に目上の人へのお付き合いから自然と出ているものでもなく、それが右翼とかの、誰か口うるさい連中に見張られていることを計算した上での、予防線としての使用、あるいは、ただ飯の種だから機嫌取ってんだよ、皇室レポートなんて神経使うだけでかったりぃなぁ……、という現場の本音が見えるからじゃなかろうかと思うんですが。

投稿: えいじ | 2004/11/18 20:15

 まとめてレスしてみます。
 機嫌の良い時は律儀かつ勤勉な人でした。

>井上さん
 伝統芸能は伝統芸能なんですが、皇室関係者の場合、歌舞伎や狂言の人たちみたいに、放蕩三昧で押し通せないところが、なんだかあわれですね。
 いや、伝統芸能の人たちのすべてが放蕩者というわけではないのでしょうが、どうもあの世界の人たちには生まれつき先行きが決められている人間ならではの退廃みたいなものが感じられるわけです。芸能は、しょせん一代限りのものなんだから、相伝されるような技芸はさっさと滅ぼすのが本人たちのためでもあると、個人的にはそう思います。
 余計なお世話ですが。
  
>のぶさん
 敬語のルール自体はたしかに、慣れればそれほど難しくありません。でも、われわれのようなパンピーがルール通りに敬語を使うと、非常にイヤな感じになる場合が多いように思います。
 敬語は、表面を取り繕う言語だけに、かえってそれを使ってしゃべっている人間の本質が透けて見えてしまう部分があります。
 ギャルさんたちが浴衣を着ると、立ち居振る舞いのがさつさがかえって際立ってしまうみたいな。まあ、私らがタキシードを着ても同じことになりますが。
 ご学友のみなさんの敬語の見事さは、羽織袴を普段着で着こなしているみたいな、不思議な軽みにあるのではないかと思います。

>よみびとしらずさん
 敬語は、第一に距離感の調整ツールであり、第二に上下関係の指標なのだと思います。
 対人関係の距離感を調整する道具としての敬語は、まあ便利なものだし、必要と言っても良いものです。たとえば、ビックカメラの店員みたいなものにいきなりタメ口をきかれるよりは、やはりとってつけた儀礼上の(マクドナルド式の)語法でもいいから機械的なレベルの敬語だけは使ってほしい、と。
 一方、上下関係ないしは身分関係を顕在化する標識としての敬語は、これは目の前で振り回されるとうっとおしいですね。少なくとも私は大嫌いです。

>えいじさん。
 心のこもっていない敬語は、あれは一種の鎧なのでしょう。
 聞いていて気持ちの良いものではありませんね。
 さらに気持ちの悪いのは、昔の少女漫画の世界にあった「お嬢様の喧嘩」みたいな敬語(あら、わたくしそんなこと知りませんことよ、みたいな)です。
 たとえば、田中康夫みたいな地方自治体の首長に当たる者が、一記者に向かって語りかける時の、「よろしければそちらさまのお考えをお聞かせ願えませんか?」
 みたいな言い方は、単に心がこもっていないのみならず、過剰にへりくだってみせることで、相手をバカにしている(子供に話しかけるときにしゃがんでみせるみたいな感じ)わけで、これは敬語の隔絶用法というやつですね。
 イヤミな敬語使いということでは、やはり康夫知事をして当代の第一人者とすべきではなかろうか、と、そのように愚考する次第です。
 私なども、対談のテープ起こしをそのまま原稿にされると、自分がおかまみたいにしゃべっていることに衝撃を受けます。
 結局、「ぼく」という主語は、文章にするとどうにも甘ったれているわけで、かといって、「私」「オレ」というのは、文章ではアリでも、初対面の人間との間の対談や座談会では、「なーに気取ってんだか」という感じで使えません。
 こまったことです。
 話がズレてますね。新しい項目を立てればよかった。
 

投稿: 小田嶋 | 2004/11/18 21:36

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