日本晴れ
朝から日本晴れ。
日本晴れが快晴を意味することは知っている。
でも、それって、形容矛盾じゃないのか?
わたくしどもは、雲ひとつ無い10月の空になぞらえられるような、そんな竹を割ったような民族ではないぞ。
日本という言葉を修飾語として使う以上、空には半ば以上雲がかかっていないといけない。
湿度だって70パーセントはあるはずだ。
つゆぐもりの空からほんの少しだけ日が差すはっきりしない天気。机に置いた雑誌の表紙が、汗で腕に貼りつく感じ。はがす時の不潔なノイズ。それでいてうかうかすると肌寒い風が吹いてきたりもする微妙な湿度感。筋向いの長屋のババアが軒先に吊るした腰巻の湿った臭気が、昼下がりの地を這うみたいな風に乗ってこっちの鼻先まで運ばれてくるプライバシー感覚。銀蠅の羽音。もしも日本晴れというのが、最も日本にふさわしい晴天のありようを指しているのであれば、それは、以上のようなおよそ気勢のあがらないアトモスフィアであるはずだ。
いずれにしても、カリフォルニアの晴天とは、使われている絵の具が違う。
長い昼寝。
例によって嫌な夢。
病院で誰かを待っている。
とても不吉な予感を抱いているのだが、それが具体的に何なのかがわからない。
「誰が死ぬのですか?」
と、看護婦に尋ねる。
が、看護婦は黙っている。
「もう死んだのですか?」
さらに尋ねる。
看護婦は答えない。
目を覚ました後も、しばらく嫌な予感が続く。
誰が死ぬのだろう。
メールを書こうか。
早まるな、と。
余計なお世話だろうか。
いや、命にかかわることだ。余計なお世話だなんてことはない。
だから、早まるなよ。
たのむから。
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コメント
大丈夫だって。
投稿: nervenarzt | 2004/10/08 22:13