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2004/09/12

駆除かよ

シカ異常繁殖、奥多摩で森林被害

 ……被害はライフラインの水道にまで及びました。7月、大雨で崩れた土砂が川に流れ込み、 町営水道の取水口をふさぎ、 一時、取水ができなくなる事態となりました。町では、シカには可哀相だが数を減らすしかないと話します。    「シカを間引きしないと大変な事になると、(東京都に対策の)お願いをしてきた。今、手を打たないと、 同じ山が発生してくる可能性がある」(奥多摩町 河村文夫 町長)    1頭ずつ猟銃で仕留めるしかないというシカの駆除。人件費などとして年間2000万円は必要で、町では都に支援を要請しました。本格的な台風シーズンを前に、 大雨で山が崩れ谷が埋まる恐れもあるとして、 警戒を強めています。(12日 17:09)
 夕刻、TBS「ニュースの森」で、「鹿の異常繁殖@奥多摩」のレポートをやっていた。  リンクがいつまで生きているかわからないので、一応説明しておく。  話の筋は、奥多摩で鹿が異常繁殖→食害による森林の死滅→保水力を失った山の土砂崩れ→取水口が埋まるなど、ライフラインへの被害も……という展開。ここまでは非常にわかりやすい。  で、当然、「鹿の数をなんとかしなければならない」という話になる。  これもわかる。  でも、なんで「駆除」なんだ?  いや、鹿を殺すなと言っているのではない。  最終的に殺さねばならないにしても、どうして「駆除」などという無慈悲な言葉を使うのか、そこがわからないと言っているのだ。  というよりも、最終的に殺さねばならないからこそ、せめて言葉の上では温かみのある扱いをして鹿の霊を悼んでやるべきではないのか?  「駆除」などという一方的なゴキブリ退治ライクな言葉を使ったが最後、本来は環境保護活動の一環でもある鹿狩りという作業に宿っている厳粛なニュアンスが台無しになってしまう。

 奥多摩町の町長でさえ「間引き」という、多少は気のきいた言葉を使っている。
 なのに、言葉の専門家であるはずの記者が、「駆除」ベースで原稿を書いている。
 バカなんだろうか。
 あるいは「鹿さんかわいそう」の側の世論に媚びているつもりなのか?

  「間引き」だって十分に無神経ではある。が、それでもこの言葉には「バランスを考えて数を減らすのです」という説明意思のようなものがある。ついでに言うなら「間引き」には日本の古い時代の寒村の遠く悲しい記憶に連なる一種詞的な響きさえもがこめられている。
 引き比べて「駆除」には、ひとっかけらの温かみもない。涙もない。罪を犯しているという自覚も気後れもないし、殺生について弁解しようとする意思すらない。ただただ「邪魔だから殺す」という無機質な決意がみなぎっているばかりだ。

  たとえば、「頭数調整」とか「最適生存数回復プロジェクト」みたいな、もう少し耳に優しい言葉を使うことはできないものなんだろうか?
 あるいは、「ディアライフコントロール」みたいな見え透いたごまかしでも良いし、いっそ、「里山の再生」(←と言いつつ、しかしてその実態は鹿狩り、みたいな)式の目くらましであっても、いずれであれ、「駆除」よりはましだ。
 最終的な解決策が、結局のところ鹿狩りであるのだとしても、その前に「われわれは鹿と山林の共存のために最大限の努力を払いました」というパフォーマンスはせめて演じておくべきだし、その意味でも、いきなり駆除などという言葉を持ってくるのはもってのほかだ……って、こんな大論文を書くほどのことでもなかったですね。
 

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