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2004/09/11

歯無し

 朝方、昨晩放置(←っていうか熟成ね)した未完原稿に再度取り組みつつせんべいを齧っていると、いきなり左上の門歯が外れた。
 取れたのは、1年ぐらい前に、根っこだけ残した歯にかぶせる形(前面がセラミックで裏側が金属)で作った差し歯で、値段はたしか10万円ほどしたはず――ってことは、オレが身に着けている装身具(だろ?)の中では一番の高級品だ。
 おそらく、接着剤かセメントのやり直しで済む話なのだろうが、困ったことに今日は土曜日で、歯医者は月曜日まで休診。
 困った。
 無理やりにはめ込んでおくこともできなくはないのだが、ちょっとしたことで外れてしまう。
 呑みこんでしまうリスクを考えると、外して保管しておくのが無難だろう。
 いや、飲むことそのものは、たいした問題ではない。
 喉に詰まるような大きさではないのだし、体に毒だというのでもない。
 本当のリスクは、呑みこんでしまった数時間後に表面化する。
 具体的には、


  1. 10万円をあきらめる。
  2. 消化管内を通り抜けた歯を再取得する。

 といういずれにしても非常に好ましくない二者択一を迫られることになるわけだ。
 aを選んだ場合の経済的損失は、これはもちろん簡単に無視できるものではない。
 心理的外傷も、だ。
 私はそんなにさっぱりした男ではない。
 おそらく、半年かそこいら、ウジウジと思い出しては苦しむことになる。

 が、真に深刻なのはbを選んだ場合の予後だと思う。
 まず、歯を拾い出す作業がキツい。
 いや、それ以前に、下水管に流れ去ってしまうリスクを回避するために排泄先を検討しなければならないはずなのだが、とすると、排泄行為そのものがかなり憂鬱なジョブになる。
 ターゲットは、洗面器。あるいは三角コーナー用ネット……だろうか。
 想像したくもないな。
 で、捜索。発見。採取。うわあ。
 そして洗浄&消毒……
 気が遠くなるような仕事だぞ。
 でもってまた、その歯を再装着する時の気分はどうだ?
「おい、この歯をハメるのか?」
「オレは、10万円が惜しくて、こういうことになった歯の継続使用を決意するような、そういう男なのか?」
 という自問自答を、オレはどうやって乗り越えるのだろう。
 なんとかおのれに打ち克って再装着を果たしたとしても、それで話が終わるわけではない。
 たぶんオレは、なにか微妙なものを食べる度に、たとえば生あたたかい味噌煮込みうどんだとかを前歯で噛み切る瞬間に、ちょっと死にたくなる。生きるってくだらないな、と。
 まさに、PTSD(ポスト・トラウマティック・ストレス・ディスオーダー:心理的外傷後ストレス障害)ではないか。
 
 わかった。歯は机の引き出しの中のプラスチックケースに保管して、月曜日まで触らないようにしておこう。
 
  とはいうものの、あらためて鏡で見るに、前歯の無い顔はあまりにも間抜けだ。
 つらい。
 
 この週末は蟄居が決定。
 まあ、そうでなくても特に外出の用事はないわけなのだが。

 というわけで、原稿でも書こう(←うわあ、弁解くせえ)。

 

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